カザン暦紀元前

トロール文明の滅亡

  • 100,000. トロールはこの惑星唯一の知的生命体だった。彼らは都市を持つ独自の石器時代文明を築いていた。有機生命(石や魔法に基づかない生命)がこの世界に生まれてから一万年強が経っており、次元間を結ぶ門が世界のあちこちに存在していた。
  • 99,000. ドラゴンらに追われたエルフたちがこの世界に到来した。エルフは深い森の中に隠れ家を求めた。ドラゴンらは高い山々を自分たちの領地とした。
  • 97,000. 「時間管理者」グルンドの死によって、五千年にわたるトロール・ドラゴン戦争が勃発した。トロールとドラゴンは争いあい、エルフはつかの間の平穏を得て、ドラゴン大陸の全域に散らばり、魔法の使用を学びはじめた。
  • 92,100. トロールとドラゴンは戦いに飽き、おたがいに喰らいあわないという和平条約を結んだ。トロールはドラゴンの所有する山の頂から星を観察して、暦をつくる「権利」を獲得した。
  • 92,000. エルフ・トロール戦争の勃発。エルフとトロールとのあいだの戦いは数千年続き、トロールが勝つかと思われたが、次第にエルフは魔法の力を修得して高度な技術を築き上げたため、トロールは負けはじめ、領土を奪われていった。
  • 70,000. ほとんど神にも等しい莫大な力を持った大魔術師たちが、トロールワールドに通じる門を発見した。彼らの多くは魔力の豊かなこの世界にやってきて、自分たちの王国を築いた。多くの者は従属するいろいろな種族も連れてきた。こうして、人間とドワーフトロールワールドにやってきたのである。まもなく、大魔術師たちはおたがいに争うようになった。
  • 57,000. 最後のトロール都市(エルフにはカーグ、トロールにはウンド=ラスプ=ダルレとして知られる)が、大魔術師ニン=ドゥルジエル=ニンに仕えるエルフたちによって蹂躙され破壊された(ニン=ドゥルジエル=ニンは歴史上に残されている最古の大魔術師である)。トロールは地下洞窟と荒れ果てた高山に逃げ込んだ。エルフたちは団結して彼らを絶滅させようとしたが、完全に葬り去ることはついにできなかった。ニン=ドゥルジエル=ニンは地下にいる彼らに対して大魔法を使うことを拒否し、またそんなことは不可能だったのである。

大魔術師戦争

  • 50,000. 大魔術師戦争の勃発。魔法は修得した者すべてに力を与えた。大魔術師たちはおたがいに争い、敵を打ち倒してさらなる力を獲得しようとした。途方もない激しさと規模で行われた大戦は惑星全土におよんだ。陸と海は荒廃した。多くの生命体は生きのびるために地下へと逃げ込んだ。古い島々と大陸は海の下に沈み、新たな陸地が隆起した。多くの種族が完全に滅ぼされた。新たな種族が争いあう大魔術師たちに仕える種族としてこの世界に呼び入れられた。
  • 48,017. グレート・サンプにあるフィーントリーン湿地で起きた魔法の爆発によってゴブリン種族が創造される。ゴブリンは七千年以上のあいだ機敏な両生類の一種として生きたが、その後一部がオークに飼い慣らされて、言語と武器の扱い方を学べるようになった。
  • 46,000. 「狂える魔術師」ルーポが魔法で歪めたエルフから最初のオークを生みだした。この新しい生き物は素早い新陳代謝と醜悪な外見、野蛮な心根を持ち、繁殖に優れていた。彼らを軍隊として使って、ルーポはあっという間に他の大魔術師の多くを悩ませるようになり、オークらはトロールワールドのすみずみまで広がった。
  • 45,900. もっとも優れたエルフの大魔術師ニン=ドゥルジエル=ニンが、「狂える魔術師」ルーポを打ち負かしてトロールワールドから追い払った。しかし彼はルーポが解き放った何万というオークらを世界から駆除することはできなかった。
  • 38,257.〜37,802. 南方大陸グラル=アンク=シャウ=ヴウンが、ニン=ドゥルジエル=ニン(といくつかの同盟者)と「異質なる」ジグル(詳しいことは名前しか残っていない)との間の五百年にわたる戦いによって荒廃し破壊された。大陸の大半は完全に破壊され、ほんのわずかな群島をその地域に残して海に沈んだ。
  • 35,000. ドワーフがグリッスルグリムという名前で知られる魔術師のしもべとしてトロールワールドにやってきた。
  • 15,000. 人間が魔術師カルバン・アダムトのしもべとしてトロールワールドにやってきた。彼らはほとんどの土地にすぐに広がり、魔法に天性の才能を発揮した。
  • 12,000. 略称をシャンギンシャンシンギンシン(後略)というドラゴンの魔術師が、ドラゴン大陸の東側の土地を世界の他の部分から切り離し、大魔術師戦争から隠退した。これが戦争の終結のはじまりとなったが、それでもまだ数千年にわたって戦いは続いた。
  • 8,500. グリッスルグリムがニン=ドゥルジエル=ニンをトロールワールドから追放し、帰還を不可能にした。これが大魔術師戦争における最後の偉大な勝利となった。これは大半をドワーフとエルフの争いに費やした一千年にわたる戦いだった。双方に味方がついたが、ドワーフのほうが多く、ニン=ドゥルジエル=ニンは老練な魔術師ではあったものの、最後にはグリッスルグリムよりも劣っていることが明らかになった。ニン=ドゥルジエル=ニンは同胞エルフを滅亡から救うために追放を受け入れた。これは数千年後にカザンが繰り返したことの先例となった。エルフとドワーフとの間の敵愾心は残ったが、おおっぴらな戦争は何千年にもわたってふせがれた。
  • 5,244. 大魔術師戦争の終結829人の大魔術師がまだトロールワールドに住んでおり、いずれもお互いに傷つけ合うことができないほど大きな力を持っていた。総会が開かれ、神のごとき魔術師たちはおのおのの限定された領地に引き上げて、トロールワールドの支配を目指さないことに合意した。従属種族らは解放されて自らの運命を切り開いていくことになった。大魔術師のうち何人かは数千年にわたって神々として崇拝された。トロールワールドから完全に去った者もいた。現在、どれくらい多くの神のごとき魔術師たちが残っているのかは誰も知らないが、少なく見積もっても500人は下らない。
  • 1,233. 昔の敵愾心が全面戦争に発展し、ドワーフ・エルフ戦争が勃発した。ドワーフは1,212年にミスティ・ウッド地域の森を何百マイルにもわたって燃やした。エルフは1,181年に地震を起こしてドワーフ都市ドルンドル(ドワーフの名前には当時母音がなかった)を破壊した。

英雄カザン

  • 1,104. カザン・オータリエル・カザン、オールド・フォレストのエルフのあいだで生まれる。エルフ以外の種族のあいだでは、彼は略称のみで知られた。
  • 943. カザンの両親と何百人ものエルフが、小型の火竜に乗ったドワーフが襲来し、火の爆撃で古きエルフの都ヤンスリールを燃やしたときに殺された。当時、ドワーフは何十頭ものドラゴンと同盟を結んでおり、ドラゴン軍に金属を提供する見返りに、戦争でドワーフに協力してもらっていた。カザンは故郷の森から東に何百マイルのところにいたひとりのナーガ族の魔術師のもとで魔法を学んでいたので、故郷と親族の死を四十五年間の間知らなかった。
  • 899. 中央密林の中心で、最初のナーガ族の十層都市シュシュルラーの建設が着工された。カザンはナーガ族の師匠のもとを離れて故郷へ帰った。
  • 872. カザンと冒険者の一行が、魔力と富を求めてグリッスルグリムのダンジョンに侵入した。一行は全滅し、カザンは捕らえられた。驚いたことに、カザンはグリッスルグリムに殺されもせず拷問されもしなかった。彼は小宇宙にただ閉じこめられただけだった。その間、彼はグリッスルグリムの弟子となり、トロールワールドで教えられているどの魔法よりも偉大な魔法を学び始めた。
  • 710. エルフとドワーフがどちらも密かに五百年間の戦争を続けているあいだ、人間の諸都市が勃興し隆盛した。「ドラゴンの喉」と呼ばれる海と川の縁にあった小村ヘロームは波止場を築いて海港となった。これ以後、ヘロームはどんどん裕福で強大になっていった。
  • 599. グリッスルグリムはカザンを解放したが、百年のあいだ人間の中で暮らし、次の百年のあいだはドワーフのあいだで暮らすよう誓いを立てさせた。カザンは人間の姿に化けて、ヘローム市に移った。
  • 499. カザンは、ドワーフ魔術師コール・モウグルに化けて、ドワーフと暮らす百年をはじめた。人間との長いかかわりから、ドワーフの名前には母音が含まれるようになっていた。
  • 487. コール・モウグルの魔法が、ドワーフの洞窟都市グレックを侵略しようとしたフロストベア・オーク族を打ち負かした。喜んだドワーフたちは彼に捧げる記念碑を建てた。カザンはなぜエルフとドワーフがこれほど憎みあっているのか不思議に思い始めた。
  • 444. オークの人口爆発。魔法をふるう祈祷師に率いられたオークの大部族連合が、故郷である荒野から沸きだして、人間の土地を略奪した。オーク以外のものすべてを殺していく作戦をとったオークたちは、人間の土地とエルフの森辺縁に恐怖をまきちらした。オークの人口は二十倍もの速さで増加した。
  • 429. オーガたちが進撃するオーク軍への参加を拒絶したため、オーガ都市サロサールは一週間の暴動の末破壊された。オーガは以後二度と自分の都市を造れるほどまとまることはなかった。
  • 399. カザンはエルフのもとに戻った。数百年の不在を経ていた彼は、同胞のあいだでなかなか受け入れてもらえなかった。彼は存命中のエルフの中でもっとも偉大な魔術師であり、エルフのあいだでゆっくりと威信と力を勝ち得ていった。
  • 393. カザンは、オールド・フォレストを襲って一部を燃やしたオーク軍を滅ぼす偉業を、ドワーフのもとでの成功に続いて再び成し遂げた。ブラックファング・オーク族は全滅した。
  • 382. ヘローム市が、オークとオーガの連合軍によって略奪され燃やされた。住人の九割が殺された。生き残った一割はドワーフらに救出され、近くの地下城塞スリンドルに入ることを許された。
  • 380. ドワーフと人間は協力してヘロームを再建した。このときに、近隣の土地を守る強固な城壁が築かれた。
  • 379. カザンはヘローム再建のため、エルフの加勢を派遣した。
  • 360. オークとセントールがヘロームを再び略奪した。今回は、海に逃げてスリンドルに避難することで、もっと多くの住人が生き残ることに成功した。スリンドルは陥落寸前になったが、カザンがエルフ軍を率いて救援に駆けつけ、オークとセントールの連合軍は打ち破られて退却した。
  • 360. エルフ、人間、ドワーフはオークとその他いわゆるモンスターたちと戦うため、三族連合を結成した。カザンは連合軍全軍の総司令官に任じられた。
  • 359〜297. オーク戦争。オーク、オーガ、セントール、ドラゴンの連合軍と、ドワーフ、人間、エルフ、ホビットの連合軍とのあいだで戦われた六十二年間の戦争によって、大陸の西部全体が焼け野原となった。カザンの行くところ「善の」種族は勝利したが、他の多くの場所で「モンスター」種族が数の暴力と野蛮な本性に頼って勝利をおさめた。ドラゴンは下級の魔術師で一番優れた者と互角の呪文勝負ができた。

カーラ・カーン、モンスター戦争

  • 313. イーグル大陸で、カーラ・カーンという名前の人間の子どもが生まれた。彼はやがてもっとも偉大な人間の魔術師となった。
  • 296. モンスター種族は打ち負かされて退却した。これはひとつの合戦の結果ではなく、何十年もの戦いの結果であった。彼らは生みだすよりも多くの戦士を絶え間なく失ったからである。
  • 295. カザンは「善の」種族をひとつの民にまとめあげて、モンスター種族を永遠に滅ぼそうと考えた。三つの種族のあいだで高く尊ばれていた彼だったが、この考えは思ったほどの賛同を得られなかった。多くの人々は自分たちの生活と文明を再建することだけを望んでいたからである。
  • 294〜0. モンスター戦争。「善の」種族は「モンスター」種族に遭遇するたびにこれを弾圧し滅ぼしていった。多くのモンスターは地下へとしりぞいた。オークとオーガはトロールと交渉して同盟を結んだ。大魔術師たちは、巨大な地下迷宮、空中迷宮、海中迷宮に隠すことでかつての従属種族らを守ろうと介入してきた。
  • 260. 群小種族であるレプラコーンが「善の」種族への参加を表明し、受諾された。
  • 200. フェアリーが「善の」種族に参加した。
  • 150. エルフ王ベリンバーと「オーク殺しの」ソールに率いられたエルフと人間の軍勢が、ナーガ国で奴隷にされている人間たちを解放する目的で、東部密林へとモンスター討伐の遠征を始めた。人間とエルフの六万もの連合軍は、苛酷な環境と、ナーガの魔術師と、解放しようとした人間たちそのものから反撃されて壊滅した。ナーガの奴隷たちは解放を望んではいなかった。彼らは自分たちが誇りをもって崇拝すべき蛇の王たちに仕えているのだと考えていたからである。たった七人の戦士だけが戻ってこの惨事を伝えることができた。エルフ王ベリンバーはナーガのンスタサと魔法合戦の末死んだ。「オーク殺しの」ソールと六人の仲間たちは、人間の軍隊がナーガの密林を侵略することは二度とないと誓約した。
  • 148. ベリンバーとソールのナーガ戦を助けなかったかどで、カザンは大衆の人気を失った。
  • 147. カザンはドラゴン大陸を離れてトロールワールドの他の地域の探検に出た。
  • 114. カザンは、イーグル大陸の某所で、自分の魔法合戦を挑んできたカーラ・カーンと出会った。黒人魔術師の勇気と力量に感服したカザンは、彼を弟子にした。
  • 103. カザンとカーラ・カーンは、オークが忌まわしい血塗られた儀式で鳥とも蛇ともつかない奇怪な存在を崇めている砂漠の島で、異星の神と遭遇した。二人はズイーチから生きのびるためにドラゴン大陸に逃げ帰った。
  • 95. オークの大艦隊と空飛ぶ蛇の群がドラゴン大陸の西海岸を襲った。艦隊の一部はヘロームを滅ぼすために「ドラゴンの口」へと向かった。南海岸にあった人間の都市コロルは陥落した。カザンとカーラ・カーンは異星の神との魔法合戦に巻き込まれた。追いつめられたカザンは、人間の弟子をナーガ族のもとに送って助力を求めた。
  • 94. ロームの戦い。二十万の海オークと四万の空飛ぶ蛇の群がヘロームを襲撃した。十万弱の人間とエルフとドワーフが街の城壁を守るため奮戦した。城壁が破られ、カザンがズイーチの呪文によって死の淵に追いやられた最悪の事態のまさにそのとき、カーラ・カーンは七人のナーガ魔術師とともに帰還し、空飛ぶ蛇を撃ち落として、進撃する艦隊を沈める大竜巻を起こした。彼らの加勢によって、精神だけでやってきていたズイーチはカザンの精神から追い出されて故郷に逃げ帰った。海オークの侵略は失敗した。侵略軍の生き残りはガル島に打ち上げられて、そこに根拠地を築いた。ヘローム近隣の海で溺れ死ななかった者の大半は、大量の略奪品を持って故郷に帰っていった。都市は廃墟と化し、再建に何年も必要とした。
  • 0. へローム最後の会議。人間のへローム王「ソールの息子」オディンは大嵐の中で世継ぎを残さずに死んだ。さまざまな派閥が権力を握ろうとしたことでヘロームに内戦が勃発した。拡張された城壁の内側に位置するようになったスリンドルのドワーフたちの懇請に応じて、カザンはエルフの森から帰ってきて、対立する諸派閥を押さえ込み、ヘロームの会議が新たな支配者を選出するまでのあいだ、調停者として玉座に座ることになった。驚いたことに、会議は彼をヘローム王に選び、街の名前をその名誉をたたえてカザンに変えた。また、カザン暦という新たな暦法を始めることにも同意し、ヘローム暦727年はカザン暦元年となった。