お約束

 2006-02-10 - 綾瀬のTRPG徒然日記
 クトゥルフについて言及されていたので。
 これは常々私も気になっていたことです。現代モノだからプレイしやすい、というのは実は幻想ではないかと。逆に、PLが現代生活について(当然そこで暮らしているわけですから)いろいろ心得ているからこそ、その背景の中で非日常的冒険をする、となると、RPGの主人公たちとして適切な行動が何か、ということがわかりにくくなってしまうと思うのです。これは、太古からある命題「PLが警察にかけこんで終了」というゲームオーバーをどのように防ぐか、という問題にもつながるわけです。
 以下、クトゥルフのプレイテクニックとして、最近つらつら考えていたことを二点に分けて書いてみます:

探索者の動機付けの“お約束”

 「クトゥルフ神話TRPG」では、PCは探索者として奇怪な事件(一見すると奇怪に見えないこともままありますが)に積極的に首を突っ込んでいくような人物であることが、基本的に求められています。
 実のところ、海外の公式シナリオ集だと、オカルト的関心を持たないズブの素人キャラクターは、探索者として想定されていないことがほとんどです。なので、市販シナリオの導入部分は、FEARの代表作品に見られるような強い力を持つものではありません。もちろん、冬山遭難など巻き込まれ型のもありますが、そうでない事件捜査型の場合は、「奇妙な事件に造詣が深いPCたちに依頼が来る」か「報道された妙な事件にPCが首を突っ込む」導入になっています。
 以上は、クトゥルフについて、意外に留意されていない約束事である気がします。このフォーマットにのっとらない場合は、現在巷で活用されているハンドアウトなりを使って、PCに強い導入理由を与える必要があるでしょう。

探索行動の“お約束”

 次に、ファンタジーRPGとは異なる、クトゥルフ独特のプレイの進め方があります。クトゥルフをよくプレイする人ならば体得していることが多いのですが、他ジャンルに親しんできた人にとっては、まず自明ではありません。この辺りをちゃんと認識しなかったために、クトゥルフ初心者の人に充分楽しんでもらえなかった苦い思い出が、私にも何度もあります。
 実のところ、この約束事についてはルールブックの冒頭に書いてあります。ただ、PLとして参加する初心者にルールブックの長文をいきなり読め、というのも酷な話なので、だいたいスルーされてしまうことが多いかもしれません。
 問題として与えられた事件の謎を解くために、どういったシナリオ上のポイントに行って、どのような行動をとればよいのか、ということが、クトゥルフではわかりにくいといえます。
 具体的には、事件の背景を知るために「公共図書館」に行って「新聞のバックナンバーを読む」、コネを使って「警察」から「関係者の身元を知る」、「報道機関」に行って「判明している背景情報を得る」、「事件現場」に行って「聞き込み」「手がかりの捜索」をする、といった行動のことです。特に、図書館はなかなか独力では思いつかないポイントですし、警察はPLに避けられやすい傾向にあるようです。
 こうしたわかりにくさを少しでも緩和する解決策のひとつとしては、あらかじめ、キーパー(GM)のほうから、事件が発生した街なり地域なりの情報マップを簡単に作って、卓上に提示しておくことがあると思います。これは「ダブルクロス」ではっきり提唱されていたやり方ですが、非常に有効だと思います。PLがどうしていいかわからなくなっても、マップに視覚的にポイントが示されていれば、とりあえずはマップに示された場所に行こう、という行動が思いつけるはずですから。もしなんなら、ちょっとボードゲーム的にはなりますが、ポイントごとに「そこで行える代表的な行動」(図書館ならバックナンバーや書籍の探索など)を情報マップ上に明記しておくと、さらに指針としてわかりやすくなると思います。