ジル・シルカ辺境の群小種族(人類)

 第四章も佳境。

アナクンドゥ人 Anakundu

 強烈な光を放つ太陽のもと、母星の寒冷な極地に住んでいたために、蒼白の肌と漆黒の瞳、そして目の直下に濃い斑点状の天然の日よけを持つ人類種族。
 非常に睡眠時間が短いことで知られ、寿命がテラン人の半分程度しかない。晩年は恒常的な睡眠不足に起因すると思われる精神疾患に冒される者が多い。ヴィラニ人が寿命を延ばす治療薬をもたらしたため、帝国に非常に好意を持っている。
 苛酷な母星環境と短命ゆえにアナクンドゥ人は運命論者である。
 ほとんど眠らなくても活動できるため、帝国陸軍で非常に重宝されている。テラン人にとっては夜陰に乗じて襲ってくるタフな強敵である。

アンサリン人 Answerin

 強い紫外線を放つ母星環境ゆえに、長身強健で漆黒の身体と漆黒の髪、漆黒の瞳を持つ人類種族。テラの東洋人に似た蒙古ひだを備えていることで知られる。
 アンサリン人は、アドレナリンバーストを任意に起こすことができるユニークな能力を持っている。一分間のアドレナリンバーストの後、次の1時間は休まなければならない。これは、彼らが「恐怖」の感情を抑制するべき心理的弱点であると見なしていることから発達した能力である。
 恐怖に我を忘れるこということがほとんどないアンサリン人は非常にタフな陸軍軍人としてテラン人の前に登場する。

ジオニー人 Geonee

 かつてヴィラニ人と銀河辺境方向宙域の覇権を巡って実に3500年にもわたって戦い続けた人類種族。征服されて2500年ほど経つが、今も誇り高い歴史を忘れてはいない。
 熱く高重力の母星に適応したため、テラン人より少し小さく、よりがっしりした身体を持っている。食生活は肉食に極端に偏っている。野菜も使うが、あくまで付け合わせ程度である。
 テラン人と最も違うのは、性別による性格差が非常にはっきりしていることである。表に出るのは男性に限られ、女性は総じて内気で家庭内の事柄に専心している。男女間の交際も厳しく戒められており、聞くところによれば「セロシー」*1という半ば知性を持った小動物を使って伝言を交換し合うのが、礼儀正しいつきあい方だという。
 ジオニー人は帝国の支配を嫌がっており、かつての黄金時代に戻ることを夢見ている。この点で、テラン人にとって有力な協力者になれるかもしれない。

スエラット人 Suerrat

 イレリシュ宙域でジル・シルカ以前に勢威を誇った人類種族。ヴィラニ人の支配下に置かれていることに好意的ではない。
 遺伝子的に人類の派生種族であることは明らかだが、顔面をのぞくほぼ全身が赤い毛髪に覆われ、器用で大型の足を持って樹上生活を好む彼らは、一見すると猿人に見えかねない。しかし、ヴィラニ人到来以前に亜光速世代宇宙船を使って広範な恒星間帝国を築いたスエラット人は、環境工学の比類無いエキスパートである。地球(ヴランド)型の可住惑星にしか住まないヴィラニ人と対照的に、環境的に住みにくい世界やジャンプ中継点の入植地、宇宙コロニーで快適な暮らしを送ることに長けている。
 彼らと会ったテラン人は時折不可解な居心地の悪い思いをするが、おそらくスエラット人の目がテラン人より少しだけ大きいからである。

*1:おそらくチャーパー