ジル・シルカ辺境の群小種族(非人類)

ヴェガ人 Vegan

 テラから最も近い宇宙域に暮らす非人類型の有力種族。ひょろ長い身体には腕にあたる部分に触手が生えており、頭部にあたるフード状の部分に二つの眼球がついている。食物摂取口は胸部にあり、呼吸はその左右にある開口部で行う。
 こうした特徴は、母星ムアン・グウィの乾燥した気候に適応したものである。かつてヴェガ人は「ヴェガ国」*1と呼ばれる恒星間国家を築いていたが、ジオニー人が征服された後に銀河辺境方向へやってきたジル・シルカによって征服された。
 無感情なように見えるヴェガ人だが、感情に流されることがないだけで、感情がないわけではない。また、数百年のスパンで生きる彼らは、テラン人の基準から言って非常に慎重である。実際、独立心旺盛な彼らはヴィラニ帝国の支配を脱したいと思い続けているが、まだ機は熟していないと見て行動を起こしていないだけなのだ。

ブワップ人 Bwap

 テラン人からは「イモリ人」*2と呼ばれる彼らは、その通りの姿つまり二足歩行する両生類の姿をしている。湿潤な世界に発祥したブワップ人は乾燥に弱く、ほとんどいつでも湿気維持のためのフードローブと水タンクを携行している。当然ながら水中での活動は得意である。
 ブワップ人は世界を一本の「生命の木」と見ており、あらゆるものはつながって宇宙的秩序を保っているのだという哲学を持っている。そのため、彼らは時として「ヴィラニ人よりもヴィラニ人らしい」種族である。すなわち、彼らにとって物事の位置づけ(階層制度)や秩序、手順を守るのは種族的本能とでもいうべきものである。このため、ブワップ人はヴィラニ帝国の官僚機構で非常に優れた役割を果たしている。また、非常に秩序だった思考能力を持つため、司法官としても有能である。
 善良な市民にとっては役立つ隣人だが、犯罪者にとっては極めて危険な敵といえるだろう。

ディシャーン人 Dishaan

 社会的にブワップ人の対極に位置する種族がディシャーン人である。長い爪を持つ大きな腕と短い脚、ハゲタカに似た頭部を持つ樹上生活者である彼らは、捕食者をしりぞけるために群集生活を始めたが、「つつきあい」の原理に支配される自社会で生きのびるために、他人を出し抜く狡猾さを鋭く発達させた。
 この結果、帝国内では非常に不誠実で犯罪気質を持つ種族として、征服以来4000年にわたってマークされてきた。絶え間ない監視の目が光る母星の外にいるディシャーン人には監視装置がつけられ、彼らの犯罪には普通よりも厳しい罰が加えられる。
 恒星間戦争の舞台に現れるディシャーン人は、おそらく帝国の外で活動している。帝国軍の一員として、後方攪乱に「放たれる」ディシャーン人は恐るべきテラン人の敵だが、一方で、帝国の監視の目を逃れた彼らはヴィラニ人にとって(そして交渉相手にとって)危険きわまりない存在といえる。

ヌギイリ人 Nugiiri

 ドロイン人。辺境の一世界キレンヌールの一大陸に住む者たちをヌギイリとヴィラニ人は呼ぶ。
 しかしヴィラニ人は銀河のあちこちに散らばって暮らす彼らが、実は同一種族であることにまだ気づいていない。一見すると原始的な生活を送っているドロイン人が地元総督の目にとまることはまずないことだし、帝国の秩序に危険をもたらすわけでもないので無視されるわけである。
 キレンヌールでも、テラからはかなり離れているので、テラン人が彼らに遭遇することはまずないだろう。

*1:Vegan Polity

*2:Newts