Galactic Civilizations 2: Dread Lordsレビュー

 日本語のレビューがどこにもないようなので、ちょっと書いてみました。やはり国内では販売してしないっぽいので、公式ホームページから有料ダウンロードするしかなさげです。そこが残念。よいゲームなのに。

 GC2はStardock社から2005年に発売された、1週間=1ターンのペースで進行するターン制の文明経営シミュレーションゲームです。RTSやオンラインゲームが花盛りの昨今ではめずらしい「シヴィライゼーション」タイプのゲームで、プレイヤーは宇宙に進出した10個の文明のうちひとつを選んで勝利条件の達成を目指します。
 3Dグラフィックで描かれた非常に美麗なゲーム画面が一見してわかる大きな魅力です(惑星や衛星が自転すらします!)。さらに、花形である宇宙船はすべて自作でき、そのデザインのまま画面に登場してくれます。艦隊戦や地上戦が起これば、独自の戦闘画面が現れて臨場感を増してくれます。そして何よりも、広大な宇宙を舞台に、惑星開拓、宇宙戦争、異種族との接触、未知の古代文明の発見などなど、スペースオペラに登場するあらゆる要素が詰まっているのです。まさに、SFファン待望のゲームといえるでしょう。
 公式ホームページ(http://www.galciv2.com/)上では精力的なアップデートが行われており、ファンによるMOD(同人データやアプリ)もたくさん発表されています。
 ただ、惜しむらくは日本語版が発売されておらず、入手はホームページからのダウンロードのみが現状です。

■銀河大戦

 宇宙は、人類が新技術ハイパードライブをひっさげて登場したことで、何十万年にもわたって起こったことのなかった大規模な覇権闘争の舞台となりました。
 この闘争に勝利する条件には、軍事勝利、技術勝利、文化勝利、外交勝利の四つがあります。軍事勝利は、登場する他の文明を全滅させる勝利です。技術勝利は、文明が開発できる技術ツリーの一番終わりに現れる「技術勝利」という技術を開発することで達成されます。文化勝利は、文化系の技術を推進することで、盤上に示される文明の影響圏(Influence)を拡大し、それが一定の広さに達することで到達することができます。外交勝利*1は、生き残っているすべての他文明と同盟を結ぶことで獲得できます。
 なお、盤面となる宇宙空間の広さやその中に含まれる星系の数、技術進歩の速さ、そしてライバル文明の数(最大9)や頭の良さといった要素を、各ゲームの開始時に細かくプレイヤーが設定できます。
 ゲームの流れとしては次のようになります。

■探査と植民

 最初、どの文明もひとつの惑星(ホームワールド:地球連邦ならEarth)、旗艦1隻、移民船1隻だけを持った状態で開始します。
 また、ホームワールドのある星系周辺以外は未探査の霧に包まれて見えません。まずは、移民船を着陸できる可住惑星を探すために、探査能力を持つエンタープライズ号似の旗艦を使って辺りの霧を晴らしていくことが急務となるでしょう。さいわい、他の星系の位置だけはサブマップに図示されるので、序盤はそこを目指して旗艦を進めていくことになります。時折、アノマリーと呼ばれるランダムイベント発生地点やリソースという重要資源の産地に遭遇することもあります。前者は何か特別なことが起きます。後者には採掘基地(後述)を建設することで莫大なボーナスが得られます。
 一方、ホームワールドや植民を果たした惑星では、地上に施設を建設して生産性などを高めていきます。その惑星に建設できる施設の数はクラスという値で決まるので、なるべくクラスの高い星を見つけたほうがよいでしょう(ちなみに地球はクラス10、10個の施設を建設できます)。
 施設には、宇宙船の建造に必須の宇宙港、生産力全体を底上げする工場、資金収入を増やす市場、人口上限を上げる農場、ターン毎の技術研究の上限を上げる研究所、政権支持率をアップする娯楽施設、文明の影響力を増大する大使館などがあり、技術開発が進むにつれてより強力なものが登場します。

■経済と生産

 内政は次のように行われます。まず、人口と税率から毎ターンの資金収入が決まります。そして、文明の生産力と施設の維持費が毎ターン消費されます。
 各惑星の生産力は工場の数と質で決まり、ターン毎に1生産力につき資金1を消費します(このため、やみくもに工場を建設すると運転資金不足で赤字になってしまいます)。生産力と維持費に使われなかった残金は予備資金としてストックされ、後々、施設や宇宙船の緊急購入や外交交渉に使うことができます。
 次に、生産力を宇宙船建造、施設建設、技術研究の3分野に割り振ります。宇宙船、施設、技術はそれぞれ完成に必要な生産力が決まっており、それが蓄積されたら使えるようになります。

■税率と政体

 税率は政権支持率に関係します。税率を上げれば、支持率は下がります。支持率は人口の増加速度に関係しており、ひいては資金収入にも関わってくるので地味ながら重要です。
 また、支持率は政界に深く関係します。文明の政体は最初、独裁制ですが、技術開発を進めることで共和制、民主制、連邦制に移行できます。より高度な政体に変わることで資金収入にボーナスを得られますが、定期的に行われる議会選挙で与党が勝利しなければ、逆に不利な効果を受けてしまいます(どの政党を与党にするかはゲーム開始時に決めます)。支持率が低すぎると、選挙に負けてしまうことがありますし、宣戦布告が否決されてしまうかもしれません。

■外交と星間連合

 外交は序盤に「汎用翻訳機」技術を開発することで可能になります。盤上に登場済みの文明にはいつでも交渉を持ちかけることができます。ここでの焦点は技術の交換です。経済的に豊かならば、大金を積むことで欲しい技術を相手から買い取ることもできます。ただ、ライバル文明は軍事技術を非常に高く評価するため、ほとんど外交で交換するのは無理かもしれません。
 また、交渉系の技術開発を進めることで、軍事同盟などさまざまな条約を締結してゲームを有利に導くことができます。戦争を終わらせるときにも外交を用います。
 もう一種類別の外交があります。「星間連合」(United Planets)と呼ばれる会議で、登場している全文明が定期的に参加して開かれ、ひとつの議題(ゲーム的な効果を伴います)について採決を行います。このとき、影響力が大きい文明はそれだけ多くの票数を獲得できます。

■宇宙船と宇宙基地

 宇宙を駆けめぐって文明のために働く宇宙船は、惑星の宇宙港で建造されます。1つの惑星で一度に建造できる宇宙船は1隻だけです。重装備で高度な技術を用いた宇宙船ほど生産力コストが多くかかります。
 GC2の大きな魅力のひとつに、プレイヤーが宇宙船を自由に設計することができる点があります。まず、技術開発でもたらされるのは基本的に宇宙船の部品だけです。一応、サンプルの宇宙船も用意されていますが、目的別に自作したほうがよいでしょう。部品には、船体、エンジン、攻撃兵器、防御兵器、モジュールの5種類があります。モジュールとは、宇宙船に特別な能力をつける部品で、移民船なら移民モジュール、兵員輸送船なら兵員モジュールなどがあります。また、これ以外にゲームデータ的には何の意味もないエキストラ部品が多数用意されていて、かっこいい宇宙船をデザインするために自由に使えます。

 宇宙船の他に宇宙基地を盤上に設置することができます。惑星の位置をプレイヤーが決めることはできませんが、建設モジュールを搭載した船を派遣すれば自由に配置できる宇宙基地は周辺の一定範囲にある惑星や宇宙船にボーナスをもたらす重要な拠点として機能します。宇宙基地には、軍事、経済、影響力、採掘の4種類があって、これに技術開発で獲得した各種モジュールを建設船を使って追加していくことで、性能を強化したり、新しい能力を付加したりすることができます。

 貿易モジュールを搭載した宇宙船は、別の文明の惑星に到着することで、出発点と到着点の間に交易路を設立して追加収入をもたらします。

■イベントとアライメント

 以上の要素を駆使してプレイヤーは勝利条件の達成を目指すわけですが、そうしてゲームを進めていくと、時折、選択肢を伴ったイベントが発生します。植民した惑星に先住民がいたが対応はどうするかとか、太古文明の遺跡を見つけたが研究するかとかいった様々な問題が提示され、プレイヤーはひとつの選択肢を選びます。この選択肢はそれぞれ善、悪、中立の3つのアライメント(文明の傾向)に対応しており、プレイヤーの文明は次第にいずれかのアライメントに傾いていくことになります。
 やがて「異星の道徳」という技術を開発すると、自分の文明がどのアライメントに属するかを最終的に決めなければなりません。こうして決まったアライメントによって、文明は特定のボーナスとペナルティを受けることになります。

■AIについて

 GC2の最大の特徴は、AIがイカサマをしないということです。他の戦略ゲームではしばしばコンピュータにルール違反を許すことで、人間との対等勝負を実現しようとしているものがありますが、GC2では難易度(他文明の頭の良さ)を上げ下げしてもAIの思考ルーチンが強化されるだけなので、相手がルールを破って生産や移動を行うことはありません。もっとも、高難度のライバル文明は無駄なく計算して最適解にもとづき行動してくるので、ともすればイカサマに見えかねないほどですが……。

■キャンペーン・ゲーム

 通常のゲームとは違う、もうひとつの遊び方としてキャンペーン・ゲームがあります。これは、一定のストーリーに沿ったいろいろな勝利条件を持つ連続したステージを次々とクリアしていくモードで、地球連邦とドレンギン帝国との間の戦争と、その果てに現れる超古代文明の秘密と敵(Dread Lords)との戦いがテーマになっています。

■十大文明

  • 地球連邦(Terran Alliance):ハイパードライブを発明して宇宙に雄飛した人類の統一国家。地球人がドライブ技術を他文明に提供したことが銀河戦争の火種となった。
  • アルタリアン共和国(Altarian Republic):人類に酷似する外見を持つ宗教的な種族の共和国。古き「アルタリアの予言」は人類の到来を言い当てていた。
  • アーシアン帝国(Arcean Empire):知られている中で最古の文明。巨体の戦士種族が支配する。ハイパードライブ以前の超光速技術スターゲートの発明者。
  • ドレンギン帝国(Drengin Empire):銀河全域の支配を夢見る邪悪な軍事国家。その歴史はアーシアンに並んで古い。地球連邦の宿敵。
  • トーリアン連合(Torian Confederation):穏和なトーリアン族の連合体。かつてドレンギン帝国に隷属していた。
  • ヨール連合(Yor Collective):機械生命体ヨール族の国家。創造主を滅ぼし、他の生物を軽蔑している。
  • コークス・ドミニオン(Dominion of Korx):傭兵稼業を営み、経済活動を第一とする商業国家。
  • ドラース・レギオン(Drath Legion):ドラースは爬虫類型の好戦的な種族で、特にアルタリアンを憎んでいる。
  • サーラン帝国(Thalan Empire):異次元宇宙からやってきたという昆虫型生物が支配する謎めいた文明。人類を将来宇宙を滅ぼす存在だと見ている。
  • アイコニアン難民(Iconian Refuge):ヨール族によって故郷を追われた科学文明の生き残りたち。

超古代文明

  • ルノール人(Arnor):「先行種族」(Precursor)とも呼ばれる、太古に銀河を支配した超文明。「アルタリアの予言」で語られている神格のおそらくは正体。絶頂期に内戦によって突然消滅した。
  • ドレッド・ロード(Dread Lords):アルノールに対抗した闇の勢力(?)。同時期に忽然と消え失せた。GC2のキャンペーン・シナリオの核心。

*1:4/12追記