トワイライト・インペリウム第3版:ハカン首長国連邦

 TIシリーズの顔である、見た目アラビアンかつスタートレーダーなライオン種族。有無を言わさず交易協定を結べてしまう強烈な能力を持っています*1

ハカン首長国連邦 The Emirates of Hacan

 巨星ケナラの強烈な光を受けて、ハカンの三重惑星は存在する。その三つの衛星はいずれも砂漠惑星特有の黄色いもやに包まれている。この三つの宝珠はアレッツィ、カムドーン、ハーカントと呼ばれている。ここで、ハカン首長国連邦は戦士と遊牧民と農夫、そして何よりも商人たちの強大な文明を築き上げたのである。
 ケナラ星系は既知の宇宙の中で最も交通が激しい場所のひとつである。ここの交通量を上回ることができるのはワームホール交通システムくらいのものである。ケナラから、無数のハカンや他種族の商船が銀河に向けて出発していく。この交通は数多くの宇宙都市全体で支えられている。そこでは倉庫、補給、整備、金融、娯楽など、絶え間ない物や船や乗員たちの行き来に必要なありとあらゆるものが提供されるのである。
 三つある高温の砂漠惑星での地表生活はもっとゆっくりとして静かである。上空の息つく暇もないほどのペースに匹敵するのはアレッツィ星のハーカラン市くらいである。アレッツィ北極の暗い谷間にあるハーカランは、三重惑星の中で唯一位置が固定している都市である。その恒久的な位置とおおよそ耐えられる程度の気候によって、ハーカランは原住民以外のほとんどの商社、投資家、山師たちの活動中心地となっている。ハカンたちは、経済関係を構築して交易を確立する傑出した能力にもかかわらず、混沌としたライフスタイルと風が強いハーカランの冷たい気候を嫌っている。
 ハカンの民は、たいてい巨大な砂丘に築かれた都市で暮らしている。こうした都市は砂漠の季節がめぐるのにあわせて絶え間なく移動している。過去数百年の間にいくつかのテクノロジーが持ち込まれたものの、大半のハカン都市は今でもツーラン獣の大群によって牽引されている。ツーラン獣のえらのような表皮は大気そのものから水分を吸収することができるのである。
 はるか大昔、ハカンは貧しい種族であり、その宇宙開発は他の帝国列強種族にくらべれば微々たるものだった。その後次第にハカンは、外世界人たちがケナラのまぶしい光のもとで育ち、母星の地下奥深くから採掘される特別な産物を喉から手が出るほどほしがっていることに気づきだした。中毒性のあるジェールの根、ハーカントの冬至にしか咲かないスターフラワーから作られた衣服、スペハットの媚薬、酒類、医薬品、禁制の麻薬……そのすべてがハカンの技と辛抱強い手によって収穫され加工されるのである。
 まもなく、ハカンは交易の達人となり、彼らの星系はどんどん強大になる交易氏族が獲得する膨大な富とともに繁栄した。その中でも最強の氏族がアレッツィのモウシール首長国だった。新たに勝ち得た富を守り、氏族間を平和的に統制・調停したいと願ったハカンたちは代議制議会を創設し、クイエロンすなわち全ハカンを代表する指導者を選出した。クイエロンは、それぞれ独自の商船隊と艦隊を持つ交易諸集団を統率する。彼の使命は、ハカンの民を帝国の玉座に押し上げて、富と平和貿易の時代を打ち立てることである。

*1:蓄財すれば即、生産や政治力に還元できるので……