トワイライト・インペリウム第3版:イサリル部族連合

 緑色の小さなステルスヒューマノイド。イラストがえらくゴクリちっくですが、能力もまさにそんな感じにトリッキー。

イサリル部族連合 The Yssaril Tribes

 マハクト宙原の近く、「涙の通廊」の対角線上にあるはるかに豊かな宙域にマイオック星とその二つの可住惑星シャロクとレティリオンが輝いている。最初期の年代記でも記録されているように、レティリオンは美味な食品になるメンの根で知られてきた。ラザックス帝国の時代を通して、数多くの農業コロニーがレティリオンに存在し、フィアンニ湿原のジャコウの臭いが漂う岸辺から根を収穫した。ラザックス皇帝ムンハン・ラス・イドゥの御代に、植民計画は劇的に拡大された。しかし、農業コロニーの拡大が始まってまもなく、レティリオンの情勢は急速に悪化した。農業機械が破壊され、孤立した農場が滅ぼされ、大地に沼地のもやがかかるときに襲ってくる目に見えない敵によって住人は殺害された。
 帝国は増援を送り、やがて移民たちは自分たちが、緑色の肌と大きな灯火のような黄色い目を持つ小型カメレオンのような原住生物による組織的な襲撃にさらされているのだということに気がついた。この原住種族は“かき消える”能力を持っており、裸眼では事実上視認できなくなることができたので、果てしのない湿原の岸辺に勃興した農業ブームタウンにとって深刻な脅威となった。原住生物は原始的な種族ではあるが、どう猛で、知性に富み、故郷の沼地への農業コロニーの侵略を食い止めるためなら何でもするつもりだった。初めの頃に捕まえた少数の捕虜から、彼らが自分たちを「イサリル」と呼んでおり、大陸ほどもあるフィアンニ湿原に広範な村落と部族のネットワークを備えていることがわかった。
 愛用のメンの根の供給を維持したいラザックスは、さらなる農業コロニーの拡大を許可し、イサリルの蜂起を鎮圧するために第21遠征師団を派遣した。この血塗られた戦争の中で、何千人ものイサリルが捕らえられ、政府や購買者に出荷されて、銀河中で研究や娯楽のために利用された。農業は再開されたが、ラザックスの師団は原住種族イサリルを完全に鎮圧することができずにいた。小さな緑色のイサリルはラザックス式の戦法に適応し、ラザックスの兵器を盗んで研究していったため、まもなくフィアンニ湿原はラザックスの徴募兵たちにとって憂鬱なキリングフィールドと化した。
 薄暮の時代に、列強種族は知性のあるイサリルを秘密工作用のスパイや暗殺者として用いることを覚えた。百年にわたって、イサリルは隠密の技、テクノロジーの用法、そして情報の力を学んだ。ほとんどの不可視になれる生得の能力とあいまって、やがて彼らは自分の潜在力を悟って強大で恐るべき「密偵ギルド」を創設した。ギルドの仕事から得た報酬によって、イサリルは莫大な収入を自分たちの文明にもたらし、レティリオンを発展させた。この力と影響力を用いて、彼らは(メンの根の供給を続けるかわりに)ラザックスに惑星からの退去を同意させた。数世代のうちに、イサリルは工業化され、教養を身につけ、野心を抱くようになった。
 秘密結社として依然強大ではあるが、ギルドは今では連合したイサリル諸部族の統治政体として機能している。ギルドは達人暗殺者の党派から指導者を選出する。この最高指導者ククアークが、知性に富み、決意に満ち、野心を抱いた強力な文明を率いている。その民は歴史上からも他の列強種族を好いてはいない。
 ラザックスがいなくなって以来、外世界人はレティリオンに上陸することを許されていない。イサリルの首都ウエッカはフィアンニ湿原のどこか奥深くにあるが、その実際の位置はイサリルたちにしかわからない。公的な事業、交易、秘密工作は惑星シャロクから指示が出される。ここはラザックスから独立を果たしてまもなくイサリルが入植した星である。外世界人に知られているイサリル都市は唯一、シャロクにあるモジェブ市だけである。ここで、またはシャロクの巨大な軌道交易ステーションハールスーフで、イサリルは外国の使節や商人や訪問者を迎えるのである。
 誇り高くどう猛なイサリルは、国境の外、そしてギルドの収入の彼方をゆっくりと見るようになっている。シャロクの惑星の影に隠れ、イサリルの熟達した秘密工作によって銀河の他の地域から隠れながら、巨大な侵略艦隊が建造中である。他の地域はイサリルの目に見えない耳目に身震いをするが、もしこの小さな緑色の種族が帝位への飽くなき野望を抱いていると知ったら恐怖に震えることだろう。