トワイライト・インペリウム第3版:イクスチャ王国

 イラスト見ると亀みたいな、ずんぐりした爬虫類ヒューマノイド古代文明。外交と防御能力に優れています。

イクスチャ王国 The Xxcha Kingdom

 最古の年代記ですら、爬虫類種族イクスチャの古代王国を最初の偉大な星間文明として認めている。裕福な宙域のただ中に位置するイクスチャの双子惑星アーコン・レンとアーコン・タウは、イクスラック星の穏やかな光を浴びている。イクスチャは今でもこの二つの惑星を“双子星”と呼んでいるが、外世界人はただちに暗い灰色のアーコン・タウはあざやかな緑色に輝くアーコン・レンとはまるで似ていないことに気づくだろう。
 ラザックスの帝国が存続している間ずっと、イクスチャは主要文明の中で最も平和的で、従順で、満ち足りた文明であり続けた。他の種族とはちがって、彼らは薄暮の時代にも権力や領土を狙おうとはしなかった。ラザックスとはちがって、イクスチャの長老たちは銀河で増大する脅威に気づいていたのである。彼らは必死にラザックスに危機を警告しようとし、種族の自立志向を抑えようと対話を呼びかけた。イブナ・ヴェル・シドという名前の有力なラザックスの皇帝顧問がイクスチャの警告に耳を傾けたが、彼ですら皇帝の誤った安全認識を変えることはできなかった。そして、災厄が訪れた。クワン危機は突如として戦争に発展した。そしてダズ・アロカン一世男爵に率いられたレットネブが豊かなイクスチャ星系に征服の手を伸ばしたのである。準備もなく、武器もなかったイクスチャは、比類のない交渉能力と善良さを使って、侵略者にアーコン・タウだけを譲渡し、王国はレットネブに監督される自治をアーコン・レンで保持した。決して愚か者ではないイクスチャは、レットネブの約束の性質と協定のはかなさを認識していた。協定は、男爵領が他の場所で戦争をしている間だけ続くにすぎなかった。まもなく、レットネブは戦利品の全てを要求し、彼らを奴隷にするだろうことをイクスチャは知っていたのである。そして、彼らの歴史上はじめて、イクスチャは武器を作り、軍隊を訓練し始めた。深い秘密の森や山奥の谷間の中で、イクスチャ王は国民が戦士に育っていくのを悲しげに見つめた。
 アーコン・タウの占領から十年も経たない内に、レットネブ艦隊はグラル星系でソル艦隊に大敗を喫した。この戦いから数惑星周期後、ソルの不死鳥艦隊がイクスチャ星系に侵攻して、アーコン・タウにあるレットネブの要塞を包囲した。爆撃と戦いは二年近くにもおよんだ。ついにレットネブの占領者たちは敗退したが、多大な犠牲をともなった。アーコン・タウの環境は回復不能なまでに破壊されていた。かつて緑色の肥沃なアーコン・レンと本当の双子星であった惑星は、今や有毒に焦げたクレーターにすぎなくなった。その森は焼き尽くされた。灰と舞い散った塵が全球規模の冬を百年にわたってもたらし、ほとんどの動植物を殺したのである。
 現在、アーコン・タウの喪失から回復したイクスチャ王国は、恵み深いアーコン・レン上で繁栄している。常緑樹の深沈と小さな内海、そして肥沃な密林に覆われたアーコン・レンは鉱物、エネルギー、食料、そして水に恵まれている。イクスチャ文明は無数の樹上にある集落や都市で暮らしている。唯一の大都市は惑星の南半球にある巨大都市ククラジである。ククラジはイクスチャ王の居城であり、その広大な宮殿は一本のクワール樹を掘り抜いたものであり、都市の中央には何マイルにもわたって広がる花園がある。
 イクスチャは根本的に平和的で、ゆっくりと動き、思慮深い民である。彼らは貴族や街の長老を深く敬愛している。イクスチャの男女に一般的な余暇は、長いパイプでジェールの根をふかしながら、意味と起源について議論することである。アーコン・レンの密林と湖は、たいていの森林惑星や密林惑星を居住不可能にしている虫の群れが驚くほど少ない。
 イクスチャは平和と交渉の信条を今でも信じているが、二度と外国の侵略に屈するつもりはない。イクスラック星系を訪れた者は、しばしばイクスチャの大戦艦がパトロールを行い、イクスルン型戦闘機が濃密な戦闘訓練を行っている光景を目にすることになるだろう。典型的なイクスチャは鈍重で、爬虫類の肉体の重さに悩まされているように見えるが、いったん奮起すれば、イクスチャは驚くほど強力で素早いのである。
 アーコン・タウの暗い影はイクスチャの空に傷跡のようにかかっている。その姿はイクスチャにとって永遠の悲しみであり、服従がもたらした犠牲を忘れない久遠のよすがなのである。イクスチャはそのような悲劇が二度と再び自分たちに降りかかることを許しはしない。イクスチャ王ククリサスは、平和な銀河のために、イクスチャが帝位をとることが皆にとって最善なのだということを悟っている。