トワイライト・インペリウム第3版:メンタック連合

 宇宙海賊な皆さん。巡洋艦駆逐艦の運用が得意。

メンタック連合 The Mentak Coalition

 辺境の古い星間航路である「涙の通廊」の一部であるマハクト宙原の彼方に、三つの小さな衛星を持つ僻遠の惑星モール・プリマスがある。この若い惑星はほとんどがオレンジミート草の大平原で覆われており、無数の湖が点在している。まだ年月の浅い峻険な山々が多くの大陸の中心に屹立しており、冷たい山の水が険しく豊かな渓谷に生命をはぐくみ、緑色の果実豊かな木々と花々がオレンジ色の大平原と鮮やかなコントラストを成している。
 資源は豊かだったが、モール・プリマスはあまりにも遠かったために、ラザックスはここを発見した後も何千人もわたって組織だった植民を行わなかった。しかし、失敗に終わったガンダー反乱事件の後、ラザックスはこの惑星を懲罰コロニー、すなわちあらゆる種族出身の極めつけの政治犯や犯罪者を送り込む遠方の監獄として使うようになった。モール・プリマスへの追放は、護送船の奥に入れられて「涙の通廊」を通っていく、マハクト宙原の凶悪な重力井戸をくねくねとくぐりぬけていく暗い旅を意味した。モール・プリマスに到着した囚人たちは、この惑星の地域総督のひとりの監督下で肉体労働に従事した。モール・プリマスの総督たちはほとんどが失脚したラザックスの政治家たちだった。モール・プリマスへの赴任命令はラザックスのキャリアにとっては、ここの囚人たちの追放判決と同じくらいの重みを持っていた。そのため、総督たちはしばしば無能で、冷酷で、苦悩に満ちた人々だった。惑星自体はかなり快適で、美しいとさえいえたが、住人である囚人たちは拷問され、栄養不良に冒され、近隣の総督どうしの小規模紛争を無理矢理戦わされていた。
 そして八百年以上が過ぎ、黄昏戦争が勃発した。帝国が崩壊し、メカトール・レックスからの補給船や監査がまばらになり、ついには途絶すると、総督たちはパニックに陥った。ある者は一夜のうちに家族とともに惑星を逃げ出した。またある者は避けられない囚人反乱によって殺された。黄昏戦争が終息するころには、モール・プリマスは解放されていた。まだ来て日の浅い囚人たちは旅立っていったが、混血の住人の大半にとってモール・プリマスが故郷だった。総督軍に対する一致団結した反乱の後、各地方間での短い内戦時代が続いた。やがてひとりの人類、エーワン・メンタックが各地域を統一して平和をもたらし、自分が死ぬ頃には惑星は繁栄するにまでなった。
 今日、モール・プリマスは各地域から選出される指導者会議である「船長会」によって統治されている。彼らの中から十惑星周期ごとにひとりの指導者が選出されて、「エーワンの手」略して「手」と呼ばれる名誉ある称号を与えられる。ハイラーの同胞たちに助けられて、この連合は技術面で多大な進歩を遂げた。モール・プリマスの衛星から採掘される金属、豊かなミート草から作られるさまざまな加工品、“特別な”船団活動からの収入、そして住人たちの勤勉な労働によって、この誇り高い文明の強靱な経済的基盤がゆっくりと確立してきている。
 メンタックの大使たちが公式には否定しているが、メンタック連合は広範な海賊行為を行っており、商業航路や小規模な軍用輸送船団に多大な被害をもたらしている。現在では教養ある文化と文明を自前で確立しているメンタックの民だが、自分たちの起源が盗賊であり簒奪者であることを決して忘れてはいない。メンタックひとりひとりは歴史的な復讐心を感じている。何百年も前に祖先をモール・プリマスに送り、拷問と無惨な死をもたらした銀河に対する復讐心である。船長会は「手」にはっきりとした答申を出した。陰謀をめぐらし、略奪し、征服せよ。支配される者が支配者となり、奴隷が皇帝になるまで、と。