精霊魔術

 サーター固有の文化だとコーラート信者くらいしかいない呪術者ですけど、やっぱりこの魔術体系が描写するアニミズムあふれる原始社会がグローランサの魅力の大きな一端を担っているわけですよね。

精霊魔術

 精霊使い(呪術者)にとって、世界は生きており、精霊に充ち満ちている。精霊とは、物体や動植物の中に住まう意識を持った存在である。精霊は話しかける。そして精霊使いは簡単な歌をうたって返事を返すことを学ぶ。
 言葉の正確さはともかく、こうした交流は互恵の精神にたって行われる。精霊は受けた恩と同じ程度の助力を呪術者に返す。たとえば、縄の精霊は物をしばる手伝いをするだろう。蛙の精霊は跳躍や妊娠を助けたり、水中で長時間過ごすことを可能にしたりするだろう。柳林の精霊は軒先を貸したり、敵が近づいてきたときに警告を発したりするだろう。呪術者と友好的な精霊との関係は個人的なもので、軽々しく他者に明かすべきではない。呪術者は祈祷師が執り行う共同体儀式に参加して、礼拝のエネルギーを提供し、見返りに共同体単位の利益を享受する。
 精霊のパワーの受け取り方は文化によって決まっている。共同体は範囲の広い崇拝伝承にしたがっており、その中にはいくつかの精霊結社を有している。これらは崇める大精霊によって内容が定められており、実際に共同体が取引を行うのはより下級の精霊である。
 精霊崇拝文化の出身ならば、伝承キーワードを獲得し、その中には〈精霊感知〉能力が含まれる。この能力によって精霊を見聞きし、交流することができるが、それ自体では精霊と取引するための特別な説得能力はもたらさない。〈精霊感知〉は単に、他の脇役キャラクターと同じように物体や動植物の精霊とやりとりできるようにするというだけである。

精霊崇拝者

 基本的な呪術者が精霊崇拝者である。〈精霊感知〉を通して、一日に1〜2体の精霊が目の前に姿を現す。ただし原則として、こうした交信を自分から開始することはできない。
 この段階では、より強力で経験を積んだ精霊使いにこしらえてもらったいくつもの呪物を持つ。こうした呪物は、自分の伝承に関係する精霊が中に入っている品物で、儀式によって作り出される。伝承キーワードの一部として、5個までの呪物能力を獲得できる。これらにはそれぞれ、中にどんな種類の魔術が入っているかを記述しておくこと。呼び起こせる効果の内容は、自然現象か非常に単純な技術の成果に限られる。各精霊は、自分の魔術の源泉であるひとつのルーンに関係している。

例: 呪物:岩のように硬い(安定のルーン)、呪物:牡鹿のように戦う(獣のルーン)

 呪物の魔術を呼び起こすときには、呪物を自分の生身に触れて、精霊の名前を大声で呼ぶか歌わなければならない。呪物は増強にしか使えない。また、あからさまに超自然的な効果も生み出せない。呪物を使うには、なぜそのたぐいの精霊が今行おうとしている行為の助けになるのかということを、ナレーターが納得できるように説明しなければならない。あきらかに適していない仕事を精霊に強制することはできず、もしそうすれば精霊は呪物から逃げてしまうだろう。また、能力を使ったときに完全な敗北を喫したら精霊は呪物から逃げてしまうし、大差の敗北の場合は一時的に眠りについてしまう。
 呪物にこもる力の強さは伝承キーワードに基づいて決まるが、ヒーロー・ポイントを1点消費すれば呪物の能力を自分の伝承キーワードより高くすることができる。キーワードの傘下にある他の能力と同じように“+1”などと書き加えること。自分の伝承キーワードや呪物の能力を上昇させるときに、充分な期間があれば古い呪物を別の新しい呪物に取り換えることができる。同じ種類の呪物のままにすることもできるし、全く違った種類の精霊に取り換えてもよい。伝承キーワードや呪物が19W以上に達したら、それ以上成長するには精霊結社に入会しなければならなくなる。
 あなたは共同体の儀式への参加と共同体の維持への貢献を期待される。もし期待に応えられなければ、ナレーターは呪物の能力にマイナス修正を与える。
 もし将来、祈祷師になりたいのであれば、現任の祈祷師を後援者とする縁故を結ぶこと。これはすなわち、一定の年数の間、祈祷師のもとで訓練に励んでいるということを表す。誰もがこうした縁故を結べるわけではないため、これは伝承キーワードの傘下には入らない。

精霊結社

 精霊魔術の伝承にマスタリーを持っているなら、その他の入会条件に合格することで精霊結社に所属できる。精霊結社は自分の文化で通常得られるよりも大きなパワーを提供する精霊と特別な関係を結んでいる呪術カルトである。自分の文化の伝承に属する精霊結社をひとつ以上選んで、特別な種類の魔術をもたらす精霊との絆を結べる。こうすることで、精霊結社の地元会員から構成される下位共同体にも参加することになる。自分の精霊結社の名前は、伝承の隣にかっこ書きで記入する。
 例:プラックス伝承(ワッハ精霊結社)
 精霊結社の会員として、伝承で得られる利益に追加、もしくは上書きする形で以下の利益で得られる。

  • 〈精霊感知〉能力が、精霊界に通じる窓を開けるパワーを提供するので、共同体儀式を取り仕切ったり、精霊界に棲む強力な精霊と交信したりできる。
  • 呪物の中の精霊を単なる増強だけでなく、範囲の広い単独の能力として使うことができる。また、超常的な効果を描写してもよい。ただし、こうして単独の能力として使うときは、限定能力修正ルールにのっとった不利益をこうむる。得られる効果は精霊結社によって許された精霊の種類に応じて決まる。また、呪物の能力や精霊結社のキーワードを上限なく成長させてもよい。自分の呪物にこめられた精霊を自由に取り替えてもよい。1回のセッションにつき1個の呪物から精霊を解放することができる。この使い方では呪物では限定能力修正による不利益を受けないが、精霊が精霊界から呪物に帰ってくるまで待たねばならないため、次のセッションまで同じ精霊を再び解放することはできない。
  • 自由にさまよっている精霊を協力者として味方にできる。ナレーターはこうした助力の見返りに精霊が何を求めるかを決めておくこと。
  • 〈精霊感知〉を使って、他者のために呪物を作成できる。セッションごとに1回だけ、[並]の抵抗値に対して〈精霊感知〉の即時対決を行う。勝利すれば、誰にでも使える共通魔術の呪物を作り出せる。もしこれをPCに譲るのであれば、もらったPCは必ず新しい能力として通常の初期値でそれを購入しなければならない。脇役キャラクター(従者は除く)に譲るのであれば、自分の勝利段階に応じた社会的・経済的等の見返りを獲得する。

 共同体と各精霊結社の両方に時間をさいて貢献することを期待される。ナレーターは一番高い呪術能力を欠点として使うことができる。共同体等への義務を欠くような行いやキーワードの示す美徳に反するような行いは、この欠点を相手とする対決を引き起こす。もし勝利した場合でも、おそらくは社会的なプレッシャーなどの障害が追加されることになる。
 精霊結社の会員として、神教や魔道や他の伝承にまつわる魔術を破棄する必要はないが、おおっぴらに使えば共同体からの不興をかうだろう。
 ゲーム中に精霊結社に入会することもできる。マスタリーに到達するだけでなく、精霊社会の地元会員から受け入れられるための障害を克服する必要がある。

祈祷師

 祈祷師は精霊界に旅することができる強力な精霊使いである。祈祷師になる条件は以下の通り。

  • 伝承キーワードが11W以上で、自分が持つ一番高い呪術能力以上の能力を備えた祈祷師を後援者とする縁故がある。
  • 精霊界へのはじめての単独行を伴う試練において、大きな障害を克服する。
  • ゲーム中に後援者の縁故を得たのなら、何年もかかる訓練を短期間に縮めるために必要となる大きな障害を克服する。

 祈祷師は精霊結社会員の利益に加えて、呪物を限定能力修正による不利益なしに単独の能力として使える。呪物から精霊を解放した場合、関係する能力の使用に+9のプラス修正を得る。
 呪物にこめられた精霊を呼び出すのに音を出す必要がなく、考えるだけでよい。
 魔精を獲得する。魔精は精霊界への旅を可能にする肉体のない第二の自己である。祈祷師が精霊界にいるとき、魔精は物質界におり、祈祷師が物質界にいるときは精霊界にいる。魔精のおかげで、精霊やその他の肉体の無い存在から、複数相手によるマイナス修正を受けなくてもよい。祈祷師が精霊界に旅立ったときには、残って肉体の見張りをする。魔精の助力によって、[並]以下の抵抗値に対する即時対決に勝利すれば、祈祷師はただちに精霊界から脱出できる(通常、精霊界を離れるには時間がかかるし、障害も多い)。魔精のパワーは全て〈精霊感知〉能力で解決する。もし魔精が何かの理由で破壊されたら、祈祷師は死亡する。
 祈祷師は、神教や魔道や他の伝承にまつわる魔術を破棄する必要はないが、祈祷師であるかぎりそれらを利用することはできない。
 共同体と伝承組織に対する義務はパワーとともに増大する。自分の〈精霊感知〉や一番高い呪術能力が欠点として用いられるとき、祈祷師は必ず-6以上のマイナス修正を受ける。