世界観の伝達

 Epiktさんの記事を読んでちょっと先日のHQ2セッションで、グローランサ初心者の若手くんに、どういうふうに伝えたっけなということを思い返してみました。
 グローランサは、グレッグ・スタフォード氏が発表した基本情報*1に、ファンダムからの妄想、深読み、俺設定が投入されてごたまぜになった闇鍋ですので、一見するとひどく緻密で膨大な情報を呑み込まなければ入っていけないような錯覚を起こす、ある意味難儀な背景世界です。
 グローランサの遊び方として、先に触れた「妄想、深読み、俺設定」をファン同士で延々と行っていく作業がひとつの軸として存在するのは確かですし、私もたいへん好むところではあるのですが、もうひとつの軸であるRPGセッションを行う上では卓のコンセンサスが取れて、プレイヤーの行動決定やアイデア提案が無理なく行える環境をととのえることができれば、それで充分です。つまり、ごたまぜの山になっている中から、自分が使おうと思うところだけ、ひょいひょいひょいと拝借してくればよいのだと私は思います。
 そういうところに立脚した上で、初心者プレイヤーに「サーター地方の蛮族さんたちが、村を救うために行う神話の再演冒険=ヒーロークエスト」を楽しくプレイしてもらうために何を伝えて、何を伝えないかを考えていくのは、時間が迫っていたこともあってなかなか刺激的な体験でした。
 結局、次のようなことだけを伝えてキャラ作成をしてもらったと思います。

  • きみたちはアルプス山脈のような高原に住む蛮族で、姿としてはバイキングとかケルト人みたいな感じ。牛や羊を放牧したり、麦を育てたりして素朴に暮らしている(サーター人のイラストを見せる。ケルト人の絵等も併せて)。
  • 生活は村単位で、いくつかの村がまとまって氏族を形づくっている。氏族=自分の国という感覚。そういう小さな国が山地のあちこちにちらばっていて、仲良くしたり争ったりしている。
  • 氏族の中心の村には族長とその取り巻きがいて、集会場や神殿や市場もそこにある。他の村はいわゆる農村の風景。
  • この世界では、物理法則のようなものも全部、神々や精霊や魔力のはたらきであり、その内容は先祖が神話として語り継いできた。グローランサでは、神話は世界法則そのものだ。
  • そして、神話をヒーロークエストという魔法の儀式で再演すれば、世界の法則を変えたり修復したり、異常な現象をしずめたり起こしたりできる。具体的には、神話の筋書きにしたがって“勇者の冒険”を遂行することになる。
  • きみたちは、あらっぽい嵐の男神たちとしっかりものの大地の女神たちを崇めており、そうした神々の神話にしたがって暮らしている(各三行程度で簡単に神々とルーンの説明)。
  • しかし、北からやってきたルナー帝国がきみたちを征服してしまった。帝国は赤い月の女神を崇めており、嵐の神々を否定する。帝国の重税と圧制で皆、苦しんでいる(ルナー軍のイラストを見せる)。
  • きみたちは、氏族の人々から一目置かれるだけの実力といろんな魔術を備えており、今回のセッションでは氏族の危機を救うためにヒーロークエストに旅立ってもらう。


 あとは、そこまでの説明で浮かんだイメージをそのまま表現していいよ、と言ってプレイヤー諸氏の好きにさせました。もし質問があったり、考えあぐねているようだったりしたら、回答や提案をマスター側からさせてもらいました。若手氏が出したサーター人がバイソンに乗っていて、バイソンを飼っているという設定は、サーター人としては相当変わってはいましたが、却下せずに通しました。ヒーロークエストを任されるようなPCが“普通の人”である必要はないからです。
 そんなわけで、良い意味でなかなか個性的なPCメンツになったと思います。プレイヤー側からのアイデアの目を「設定にそぐわないから」と言って却下してしまうのではなく、微修正にとどめたり、プレイ中の演出で調整したりして、なるべく実現させていったほうが、プレイ内容が幅広くなるし、マスター側の負担も軽減されるのではないかと昨今は考えています(特に後者の理由が重要)。
 とりとめもないですが。今日はここまで。

*1:たびたび変わる