ヴァンパイア:ザ・マスカレードのロサンゼルスは、ニューヨークと並ぶ世界最大の版とのひとつですが、アナーク革命の最大の成果であるという点で突出しています。ロンドンとウィーンが第二次審問によって陥落し、ベルリンがアナーク革命を達成した現在でも、ロサンゼルスはヴァンパイア社会で大きな存在感を持っています。
1. 黎明期とハリウッドの誕生(1828年〜1944年)
1828年、東海岸の古い芸術観に絶望したトレアドールの長老、クリストファー・ホートンがロサンゼルスに到来しました。13才の少年の外見と幼児性に古老の狡知を備えたこの長老は、西海岸のこの街を理想郷「カルタゴ」に見立てて、裏から発展をコントロールしていきました。宗教上の新天地にしようとした宣教師たちを追い出し、幸運にも巻き起こったゴールド・ラッシュに背中を押されて、ロサンゼルスはトレアドールが好む退廃と放埒の楽園となったのです。
ホートンはやがて後景に退き、子のドン・セバスチャンを侯主に据えました。カマリリャの支配のもと、ロサンゼルスは西海岸屈指の大都市へと成長し、数多くの血族が集まるようになりました。1909年、ホートンは映画産業に心を惹かれ、その振興に尽力し始めました。大規模なスタジオシステムが導入され、ハリウッドが成立したのです。
2. アナーク自由州の誕生(1944年〜1998年)
第二次世界大戦のさなかの1943年、ブルハー氏族のジェレミー・マクニールがロサンゼルスに到来しました。アナークのカリスマである彼をドン・セバスチャンは嫌いましたが、ホートンはジェレミーを気に入り、侯主に追放を禁じました。このため、ロサンゼルスでは貴族的で退廃したカマリリャ宮廷と、急進的で活発なアナークとの対立がにわかに高まりました。ジェレミーの人気が高まり、ドン・セバスチャンはますます強権的になっていったのです。
そして運命の翌1944年。ドン・セバスチャンの宮廷を訪れたジェレミー・マクニールは、侯主によって散々に辱められ、陽光にさらされそうになったところを、かろうじて脱出に成功しました。ジェレミーは盟友サルバドール・ガルシア(ブルハー)、そして侯主の横暴に激高するアナークたちとともに計画を練り、ロサンゼルスで大規模な人種暴動が起きた夜、一斉に蜂起して、侯主ドン・セバスチャンを滅ぼし、参議らを殺害・追放することに成功しました。12月22日、ジェレミー・マクニールは史上初の「アナーク自由州」の建国を宣言し、カマリリャをはじめいかなる他派閥の介入も拒絶したのです。
しかし、カマリリャのインフラを失ったロサンゼルスは、ヴァンパイア・ギャング同士の凄惨な縄張り争いに突入してしまいました。混乱がおさまらない事態を重く見たジェレミーは1956年に各ギャングのリーダーを「貌役」(バロン)に任命し、ロサンゼルス中央部を中立地帯とすることで新たな秩序を築きました。この体制は成功し、ワッツ暴動を利用したサバトの大攻勢や、セト人の侵入をしりぞけました。貌役に率いられるギャングの数は最大13を数え、抗争は絶えないものの、長老たちの再侵攻をくいとめて自由州は存続していきました。
3. 東洋の侵略者とマンダリネイト(1998年〜2004年)
1998年、謎の勢力がロサンゼルスに上陸します。それは東洋からやってきた吸血鬼「鬼人」の一派でした。奇怪な技を用いるこの新たな敵に対してアナークたちは団結して立ち向かいますが、翌年、和議が成立。鬼人たちはチャイナタウンを版図とするギャングのひとつとして認められました。しかし危機は去りませんでした。アナークたちの多くが彼らと同盟を結び、ロサンゼルスは鬼人の「新約府」に呑み込まれてしまったのです。ジェレミー・マクニールはサンフランシスコに脱出し、鬼人とカマリリャとの同盟を防ごうとしました。
この時点で、新約府(鬼人=アナーク連合)、サバト、セト人、そしてラスベガスから進出してきたジョヴァンニ氏族がロサンゼルスの権力空白をめぐって相争う状況になっていました。そこに、カマリリャは新たな侯主セバスチャン・ラクロワを送り込みました。さらに、血裔の劇的な増加もあり、ロサンゼルスは相異なる勢力がパッチワークのように縄張りを持って争いあう政治的るつぼとなったのです。
4. 石棺の危機(2004年)
2004年10月末。ロサンゼルスに貨物船「エリザベス・デイン」号が漂着。不気味なことに、船員は誰も乗っておらず、ただひとりまたひとりと行方不明者が出ることを記録した船長日誌と、奇妙な石棺だけが見つかりました。それは11世紀に現在のトルコのアンカラで発掘された「アンカラの石棺」でした。
ロサンゼルスの各勢力はこの石棺を巡って激しく争いました。アンテディルヴィアンが眠っていると信じられたこの石棺は鬼人、ジョヴァンニ、そしてラクロワ侯主の野心の焦点となり、最終的に、ロサンゼルスからの鬼人の撤退、そしてラクロワの滅びにつながりました。
*この石棺の顛末が「ヴァンパイア:ザ・マスカレード ブラッドライン」PCゲームの内容になります。正史としては主人公が鬼人を打倒するエンディングに沿っています。
5. 貌役評議会と第二次審問(2010年代後半〜現在)
石棺の危機の後、アイザック・エイブラムス、「ナインズ」・ロドリゲス、テレーズ・フォアマンらが「貌役評議会」を結成して、ロサンゼルスにおけるアナークの覇権再確立に動きました。これに対してカマリリャはサンフランシスコの元侯主ヴァネヴァー・トマスをラクロワの後継者に推しましたが、第二次審問の攻勢を受けてロサンゼルスから撤退を余儀なくされました。
2021年には聖レオポルド会による大規模作戦で数多くの血族が滅ぼされる事態が発生しました。アナークたちは逆襲をかけてレオポルド会の拠点を壊滅。鬼人襲来以来のロサンゼルスの動揺はひとまずおさまりを見せています。
こうして現在もアナーク自由州は「第二次アナーク大叛乱」革命の確かな果実として、全世界に決起をうながしているのです。