ヴィラニ人と広告

 第四章「帝国」読み中。
 ヴィラニ帝国の社会体制を、「儒教を中心とした身分制度でもって、個々人の社会での居場所を確保しようとした」中華帝国にたとえているのはおもしろいですね。

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 統制経済と確固たる身分制度の中で何千年も暮らしてきたヴィラニ人の社会には、アドバタイズという概念そのものがありませんでした。身分やコミュニティごとに、使う日常品や服装は決まっていたため、テラのように多種多様な商品を店先に並べて売る必要もなかったし、新製品が出る時は政府公報で発表されたからです。
 そんなわけで、テラン人商人が初めてヴィラニ人世界にやってきたとき、ヴィラニ人たちはそのカラフルで騒々しい広告や売り口上をそっくりそのまま真に受けてしまいました。結果、初期の接触では、テラの蛮族は嘘つきだという嫌悪がヴィラニ人の間に広まることになりました。
 これに気づいた政府や企業、個々の貿易商人たちは、ヴィラニ人に対しては商業戦略を誠実で実用一辺倒なものへ見直すことにしました。もちろん、お人好しなヴィラニ人につけこむ悪徳業者は絶えませんでしたが、政府や企業はそうした不心得者を厳しく取り締まることで、将来の禍根を断とうとしました。