トワイライト・インペリウム第3版:ナール集合体&サーダック・ノール

 人面蛇身なテレパス種族ナールは、必ずラウンドの最初の手番をとるとか、戦闘前に退却できるとか、相手の意図を予測していることを表す能力を持っています。
 昆虫型種族のノールは、戦闘に強い!というただ一点のみの豪快種族。
 以上で基本ボックスの十大列強種族は紹介終わりですが、今週発売されたエキスパンション「Shattered Empire」で新たに三種族が参戦するとか。

ナール集合体 The Naalu Collective

 黄昏戦争の中頃まで、ナール文明は銀河の他地域に知られていなかった。白い恒星マラクが統べる彼らの星系は、ラザックス以前にまで有史をさかのぼることができる裕福な星系に取り巻かれていながら、おかしなことに帝国に発見されなかったのである。驚愕の時期を過ぎると、星図職人や歴史家たちはナールたち自身による人心操作を疑い始めた。古い記録を研究した後、調査した者たちはこの宙域で失踪した船が特筆すべき数にのぼり、それよりもはるかに多くの船がここで漂流し、その乗員は深宇宙での記憶を喪失していることを突きとめたのである。科学者の中には(声高に主張した者たちは怪死を遂げた)マラクの宙域を大量のイサリル宇宙船が通過した記録が残っているにもかかわらず、漂流船は一隻もなく、イサリルの乗員が記憶喪失に見舞われた記録もないことを指摘した者もいた。後に隣人たちに恐怖とともに知られることになるが、ナールは高度なテレパシー能力を備えており、テクノロジーと武器を併用することで、全ての既知の主要種族を動かしている神経インパルスを曲げたり、操ったり、傷つけたりすることができるのである。
 イサリルの密偵ギルドと精神を操るナールが以前から秘密の協力関係にあったことは、銀河の他地域と接触がなく、孤立しているようにみえたナール文明が、どのようにして他地域と同様に(時にはより優秀な)傑出した民間・軍事技術を開発したのかを説明するに至った。
 ナールの出現からまもなく、列強種族のいくつかは帝国のただ中に現れた新たな強力な同盟者としての価値を見て、彼らの忠誠を勝ち得ようとした。しかし、ナールのテレパシー能力を知り、美しいナールの奇怪な尊大さを目の当たりにすると、精神を操作するヘビのように陰険な種族を恐れて、多くの国々はすぐに使節と外交官を引き揚げた。
 じめじめした何の特徴もない惑星マールクに発祥したナールだが、息をのむほど美しいドルアーを自らのホームワールドにした。ほとんどのナールはマールクが発祥地であると言われても一笑に付してしまう。最近の世代のナールはしばしば、誇り高くストイックな種族が風光明媚なドルアー以外の惑星から(特にマールクの悪臭放つ荒れ地と霧に包まれた平原から)生まれたことを示す確実な科学的証拠に対してさえ異論を唱えようとする。
 ナールが口頭で互いに意思疎通することはめったにない。テレパシー交信のほうがより効率的であり、感情も知的理解も促進し、集合体の大規模な内戦を防ぎながら、彼らの文化と技術の急速な進歩に拍車をかけ(これにはイサリルの支援があった)、ナール艦隊と軍事力を作り上げたのである。外世界人と話す以外では、ナールは声を音楽にしか使わない。それはシュッシュッという音の旋律がつむぐ幻惑するようなアリアである。
 ナールは、重工業のほとんどをマールクに置くことで、その水晶の都市の目もあやな美しさとドルアーの環境を無傷なまま保ち続けている。こうした産業には、ナールによって奴隷にされた知性の低い沼地の種族ミアシャンが従事している。彼らは巨大な製鉄プラントや地下ガス鉱山、何千とある齧歯類農場ではたらいている。原材料はまっさきにドルアーに出荷されて、巨大な地下倉庫におさめられ、グライダーでドルアーの諸都市に空輸されるのである。
 ナール集合体の指導者は必ず女性である。同様にほとんどのナールの指導者たちも外世界の代表者たちも皆女性である。過去十年間は、背が高く赤いウロコを持つクエッシュ・シッシュが、輝く水晶都市イーシーンにある宮殿から集合体を統治している。ナールの美しくなめらかな宇宙船がマラクの外縁境界をパトロールしている一方、ナールの陸軍はドルアーの二つの衛星で訓練され召集されている。希少なラジウム結晶装置であるネフィッシュを使って、クエッシュは他の種族の心をのぞくことができる。何事かを知った彼女はほほえみ、それと同時にナール集合体の指導者たちも、彼女の心に映った知識を感じ、彼女の思考に潜む甘やかな毒を味わってほほえむのである。集合体の遠大な計画は最終的な姿を現そうとしている。長い間、ナールは遠方から他の種族の混沌と醜悪さを観察してきた。ドルアーの美がマラクの境界の外へ広がる時が来ようとしている。今、銀河がナールの静けさ、ナールの秩序、ナールの真の美を知るべき時が近づいている。銀河はその美に屈するだろう……さもなくば滅びるだけだ。

サーダック・ノール Sardak N'orr

 ユニコーン星雲を超えたあたりに、黄金のサーダック星がその太古から続く熱い光を、巨大で海のない惑星クイナラに注いでいる。この巨大惑星は夜にくすんだルビー色に赤く輝き、極地の大嵐は宇宙からでもはっきり見ることができる。軌道宇宙ステーションと巨大な艦隊の広大なネットワークが、昆虫種族ノールの流儀で星系じゅうに構築されている。巨大なクジラのようなノール空母は、巣を荒らされて激怒したスズメバチのように戦闘機を吐き出す。氷山でできた輸送船団が絶え間なく惑星トレン・ラクからやってくる。小型のクモのようなロボット船が氷の側面に潜り込み、氷を軌道上の液体精製プラントに運んでいる。その後、このプラントから水と塩が太ったサン・グライダーによってクイナラに飛ばされ、甲虫の風船のようにしてゆっくりと眼下のノール都市に降りるのである。
 クイナラ自体は、主要文明が生活する惑星の中で最も可住性に乏しい星である。クイナラほど荒涼とした惑星はレットネブのアーク・プライムくらいしかない。しかしレットネブはアーク・プライムの地下でしか暮らしていないが、ノール文明はクイナラの諸大陸の陸上にも地下にもしっかりとした定住地を築いているのである。クイナラの極地だけは、さすがの強靱なノールであっても長期間続く猛烈な嵐のせいでほとんど生き延びることができないため、大部分が無人である。極地の嵐のすさまじさには比べるべくもないものの、荒々しい雷、雹、ダストストームが惑星全体に頻発している。だがノールにとってはそれが普通なのである。
 クイナラを訪れた者は、首都フ・コールの入国管理局に直接飛ばされる。もし天候が充分な視界を許してくれれば、ほとんどの訪問者はこの都市の巨大な規模と爆発的な交通量に瞠目することだろう。ノール建築は普通、楕円形や円形であり、この惑星によく見られる地質によくにた堅くて赤い物質でできている。ほとんどのノール大都市と同じように、フ・コールの特徴はそびえたつ建築物に、不規則に広がる低階層な建物、そして突然大地に開いて赤い地表の奥深くに広がる都市巣をあらわにするクレバスである。混雑する道路とホバーレーンが何千本もこの都市を横切っており、しばしばノールの乗り物で渋滞している。
 ノールは、自分たちは「母なる女王サーダック」に統治されていると語るだろうが、この認識は事実よりはむしろ儀礼的なものである。神話上の「母」に会ったことのある者は誰ひとりとしておらず、外世界の記録にもこの件にいささかの真実でも含まれていると示唆するものはない。ノール国家の目に見える指導者は「女王の使い」という男性のノールで、この種族の文化、経済、軍事を司っている。「使い」の任期と選出方法は秘密結社「ヴェール団」によって決められているらしく、この結社がノールの実権を握っているようだ。
 「使い」と「ヴェール団」がノール軍と艦隊の急速な拡張を監督している。テックラーのエリート兵団が民の誇りである。テックラーは南極地方でのみ訓練を行い、弱者は死に、強者はグ・ホームすなわち名声あるテックラー兵団の一員となって、ノールから騎士のように遇され、銀河じゅうで恐れられるのである。クイナラはゆっくりとまわり、星々が再び正しい位置に来ようとしているため、「ヴェール団」は進出の時代がやってこようとしていることに気がついている。そのときこそ、群れは星々を覆うのだ。