Trail of Cthulhu読解

piroki2008-04-02

 ハードカバー版がようやっと到着しました。どうも限定五千部刷って再版しないという漢な意向のようで。サプリメントもまるっきり予定してないそうです。それはそれで問題ない。
 ToCは、戦争と全体主義の影が世界を覆う1930年代を舞台にしたクトゥルフ神話RPGですが、ばっちり冒頭に「Based on Call of Cthulhu(ゲームのほう)」と書かれていますね(^^ ナチスのアーネンエルベだのがクトゥルフ教団などにまじって挙げられているあたりが30年代なのかな。
 ToCのシステムはEsoterroristとかFear Itselfといった同社のホラーもので使われている「調査型シナリオ特化」が特徴のルールですが、かいつまむと、以下のようなかんじ。

  • ピュリストとパルプの二つのプレイスタイルがある。ピュリストは「宇宙からの色」「闇に囁くもの」「狂気山脈」などじりじりと明かされる真実に直面する一般人を描くスタイル。パルプは「ダンウィッチの怪」「チャールズ・デクスター・ウォード事件」などより冒険活劇色が強いスタイル。ピュリストプレイでは探索者の能力に上限が課せられたり制限が大きい。
  • キャラクターのデータは技能のみ(能力値とかなし。Sanity Stability Healthも一般技能にカウント)。
  • 技能は調査技能と一般技能の二種類にわかれる。技能のレーティングは、判定値だけでなく、その技能を消費して「もっとがんばる」ことができる回数も表している。一般技能ではダイス判定(Test)にも使われる。
  • 調査技能は、適切な場面で適切な種類を持っていさえすれば自動成功が保証されている。CoCであった技能ロール失敗→重要情報ゲット失敗→シナリオ停滞という悪循環を防ぐための仕掛けで、GUMSHOEシステムのキモ。なお、「もっとがんばる」(=レーティングを消費)することで、取得困難なより詳しい手がかりが見つかったりすることも。ただしこうして消費された調査技能はセッション中低下したままなので注意。
  • 一般技能は、他のRPG同様の感覚で、6面ダイス1個による判定に使用する。1d6で難易度(デフォルト4)以上が出れば成功。このとき、技能レーティングを消費すると、消費した点数だけ1d6にプラスされる。こうして消費された一般技能は、セッション中の一定時間で回復できる(運動系なら24時間で)。
  • 追随(Piggybacking)オプション:隠密行動など、従来のシステムでは、ひとりは得意だが他の仲間がダメなので失敗しやすい行為について、ひとりが代表して判定を行い、他の仲間は技能レーティングを消費すればお相伴にあずかれるというもの。
  • 戦闘ルールは、該当の一般技能(格闘、白兵戦、射撃)で、相手の命中目標値(Hit Threshold)以上を判定で出せば命中。ダメージは「1d6+武器修正−装甲値」で、相手のHealthを直接減らす。あとは遮蔽ルールくらいで、かなり簡単。いちおうフルオート射撃のルールもある。
  • Healthが正の値のときは影響なし。ゼロ以下になると負傷したことになり、-12以下になると死亡。なお、パルププレイではカルトの雑魚信者などはゼロ以下で死亡にしてもよい。
  • CoCで言うところの正気度ルールは、Stability(精神安定度)とSanity(正気度)の二つの数値で表される。怪物や怪現象などとの遭遇によるショックを表すのが前者で、クトゥルフ神話によって常識や現実把握が崩壊していく過程を記録するのが後者。CoCでの遭遇即SANチェックに相当するのがStabilityの減少で、怪物を実際に目撃したり魔道書を読んだり呪文を唱えたりすることでゆっくりと削れていくのがSanity。もちろん、Cthulhu Mythos技能で上昇すればそれだけSanityががりがり削れる。こうして二種類に分けることで、精神安定度は高いがクトゥルフ神話を知って正気があやうい人物(ダンウィッチの怪の博士たちなど優れた探索者。クロウ先生もか?)を表現できるようになったというのがウリ。
  • Stabilityがゼロを切ると技能判定に影響がでたり、精神障害を起こす。Stabilityが下がりすぎても永久的狂気に陥る。各探索者ごとに設定されているDrive(行動動機。冒険心、好奇心、歴史愛好癖、使命感などなど、事件探索にのりだす理由となる姿勢)に反する行動をとったときもStabilityは減る。
  • Sanityがゼロを切ると永久的狂気に陥る。Sanityには「正気の柱」と呼ばれる事項が各探索者ごとに設定されている(家族、信仰、信念などなど)。Sanityが減っていくとこれらがどんどん瓦解していく。

 以上がだいたい本文の三分の一を占めて説明されているシステム部分です。次の三分の一がクトゥルフ神話関連の情報で、呪文やクリーチャーの内容もここに含まれています。最後の三分の一が30年代解説とシナリオ「キングスベリーの怪」です。索引もちゃんとついてます。

 ちなみに神々ですが、CoCのようにグレート・オールド・ワンや外なる神というように明確に区別されていません。さらに、それぞれの神性についてさまざまな解釈を同時に載せて、好きなように使うよう示されています。
例:クトゥルフ御大についてのいろいろな解釈

  • 南太平洋のルルイエに沈んでいる(以下CoC参照)
  • 深きものの主神
  • 水のエレメントのグレート・オールド・ワンの長。風の長のハスターと敵対。旧神によってルルイエに封じられている。
  • 宇宙の四つの根源的な力のひとつ「重力」を体現する外なる神*1
  • オールド・ワンによって何らかの目的で創造された存在。
  • 人間の脳みその中にある原初的な部分(ルルイエ)に概念的に存在する超次元的存在。夢や緊急事態時や芸術家のインスピレーションのみに現れる。
  • ある次元領域(ルルイエ)に充満する単眼の無数の触手の存在。ルルイエは我々の次元に重なって存在し、いくつかの場所で強くつながっている。そこからの異質なエネルギーを人類は「魚類」的なイメージでとらえる*2

(笑)

 あ、あと神々にはStabilityとSanityの減少基準しかデータがありません。「砲撃の嵐の中でショットガンを何丁持っていようと無意味でしょ?」と書いてありますが、どういうたとえだそりゃ(汗

*1:電磁気力をクトゥグア、弱い力をハスター、強い力をツァトゥグアが体現

*2:……デモンベインのアレ?