鼠衛士の冒険(4)
冬の空は暗く寂しく
緑なす大地も今は枯れ果て
食は少なく夜は長く
苦き歌に時は止まり
蔦の上に命は凍る
汝と我に終焉の来たるや?
否、ただの季節、巡りめぐるものにすぎぬ
備えなくば冷たき教えが下されよう
――1152年の冬に書記ロイビン詠む
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第4章はセッションの進め方が詳しく書いてあってたいへんおもしろいんですが、ここでは章末のサンプル・ミッション(シナリオ)を挙げてだいたいの流れを見ていきたいと思います。
サンプル・ミッション「穀物輸送人を探せ」
集合
友だちをさそいます。このミッションは3人がベストですが2人や4人でも遊べます。
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巡邏隊結成
メンバーが集まったら、このミッションについて誰がGMを担当するか決めます。それからサンプル・キャラクターであるサディー、ケンジー、サクソン、リーアムのうちから自分のキャラクターをそれぞれ好きに選びます(原作ではこの冒険にサディーはいませんが彼女を選んでもかまいません)。
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プロローグ
この巡邏隊にとって初めてのセッションなら、プロローグはスキップします。もし別のミッションに引き続いて行われるなら、プレイヤーのうち1人がそれまで行ったセッションの経緯を思い出して説明します(このプレイヤーは褒美として、自分のキャラのバッドコンディションをひとつ回復できます)。
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ミッションの伝達
このミッションの題名は「穀物輸送人を探せ」といい、1152年秋にはじまります。天候はさわやかな晴れです。
グウェンドリンから、ルートワロウの村からバークストーンの村に向かう道をたどって、行方不明の穀物輸送人を探すように命じられます。このときグウェンドリンはケンジーを横に引っ張っていって、件の穀物輸送人はロックヘイブンにかかわる秘密を盗んで売り飛ばそうとしているスパイかもしれないと告げ、その真偽を確かめるよう言い渡します。
(この追加指令は、他のプレイヤーが知っていてもかまいません。ただ、ケンジーがこの件については責任を持つということです。もしケンジーが参加していないなら、巡邏隊を率いる鼠が担当します)
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セッションの目標を書く
ミッションを伝達されたら、プレイヤーは自分のキャラクターがこのセッションで目指す目標を書きとめます。サンプル・キャラクターの目標については、すでに次のようにシートに書き込まれています。
ケンジー「私は、穀物輸送人が裏切ったかどうかを示す証拠を発見する」
サクソン「俺は、この任務中、ケンジーとリーアムを守る」
リーアム「私は、ケンジーとサクソンに、私が巡邏隊にとってなくてはならないことを証明する」
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ミッションの構築
このミッションの進行は次のような流れを予定しています。まず巡邏隊が〈偵察〉技能を用いて原野を旅し、問題の穀物輸送人を追います。この鼠を発見したら取り調べます。以上のように、現時点で想定しているミッションの障害(obstacle)は、原野(wilderness)と、鼠(mice)の二つです。
(「Mouse Guard」では、ミッション中に判定とアイデアを用いて乗り越えるべき問題のことをすべて「障害」と呼びます。この障害は大きく分けて四種類。「天候」(weather)、「原野」、「動物」(animal)、「鼠」です。うち2つをミッションのデザイン時に想定しておくよう推奨されています。残り2つは突発的な事態に登場させるべくとっておきます)
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GMターン
目標の設定が終わったら「GMターン」になります。GMターンは、GMがセッションを牽引していく部分のことで、GMはキャラクターの前にたちふさがる障害をプレイヤーに与え、どんな能力や技能を使えばそうした障害を乗り越えられるかを提示して、判定を行わせます。ミッションが完遂されたら、GMターンは終了します。
まずGMは「きみたちは道で行方不明の鼠の痕跡を探しているが、今のところ見つからない。もし彼がバークストーン村に着く前につかまえたいなら、〈偵察〉判定を行うこと」と告げます。この判定は捜索対隠密なので、穀物輸送人の〈本能〉Nature能力との対立判定になります。
もしキャラクターがこの判定に勝てば、無事、路上を急ぐ穀物輸送人を発見でき、次の障害に進めます。しかし負けてしまっても、それで探索は失敗ではありません。「Mouse Guard」では判定に失敗した場合、GMは二種類の結果を選ぶことができます。すなわち「ツイスト」(twist:ひねり)と「バッドコンディションを伴う成功」です。
この判定では、前者のツイストが用意されています。ツイストとは、障害を乗り越えようとしたときに、さらなるトラブルが起こって冒険が新たな(そして予想外の)展開をすることを言います。ここでは「ミッションの構築」の段階でとっておいた2つの障害のうちのひとつ「動物」障害に該当する、蛇との遭遇が起こることにします。穀物輸送人を探していた衛士たちは、転倒した荷車を発見します……なんと彼はすでに蛇に食べられていたのです! 近くの巣を守るため、蛇はキャラクターたちに襲いかかります。
一発の判定で解決すべきではない、こうしたのるかそるかの決戦は、コンフリクト(Conflict)と呼ばれるルールで解決されます。コンフリクトは血で血を洗う戦闘だけではなく、交渉やチェイス、困難な旅程踏破など、ミッションの山場となるいろいろな状況を解決できる簡潔なルールです(第5章にて後述)。
蛇を倒したならば、残された荷車の中から、ロックヘイブンの構造が描かれた秘密の地図を発見します。穀物輸送人がスパイだった証拠です!
あるいは、穀物輸送人を無事発見していれば、「鼠」障害に該当する穀物輸送人を尋問することで口を割らせることができます。このときも対立判定を用いますが、キャラクターが負けた場合、今度は「バッドコンディションを伴う成功」を適用するとよいでしょう(ここでは「怒り」のコンディションが推奨されています)。これは、目指した結果は得られたものの、キャラクターが代償としてバッドコンディションをひとつ得るというものです。「Mouse Guard」では、キャラクターの状態をコンディションの変化で記述し、ヒットポイントなどはありません(第5章にて後述)。
以上のような経緯で、穀物輸送人を発見し、その裏切りの証拠を発見するというミッションの所期の目的は達成されました。GMはGMターンの終了を宣言し、続いてプレイヤーターンの開始を告げます。
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プレイヤーターン
ミッションが完遂されたら、ゲーム進行の主導権はプレイヤーに移ります。プレイヤーは自由に場面を演出して好きな判定(チェックと呼びます)を1回行う権利を得ます。これはバッドコンディションの回復に用いたり、今回の事件のさらなる捜査に使ったり、新たな装備や人脈等の獲得にあてたりできます。加えて、ミッション中に“自発的に”不利な結果を受け入れることで獲得したチェック権も使うことができます。
全員がチェックを使い切り、思い思いの場面を演出したら、プレイヤーターンは終了です。続いてセッションの終了処理に移ります。
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セッションの終了
各プレイヤーは自分のキャラクターの信念、目標、性癖を読み上げます。そして参加者全員で報酬獲得を審議します(運命ポイントと個性ポイント)。これが終了したらセッションは全て完了です。お疲れ様。
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もちろんこれで冒険は終わりではありません。次のセッションでは、今回明らかにならなかった謎の解明におもむくこともできますし、全く新たなミッションをグウェンドリンなどから請け負うことになるかもしれません。どうするかは参加者みんなで決めることになるでしょう。
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(続く)