〈方舟〉アルタンザール Altansar


 アルタンザールは、エルダーの小規模な〈方舟〉である。〈エルダーの失墜〉を生き残ったが〈恐怖の眼〉に囚われ、〈不死鳥の将〉モウガン・ラーだけが逃げのびた。モウガン・ラーの故郷が〈恐怖の眼〉に呑まれてから地球時間で一万年の後、999.M41に〈強奪者〉アバドンが〈眼〉の奥底から第十三次〈黒き征戦〉を押し出した。悪夢の領域が渾沌の兵団を物質宇宙に吐き出したあとには、大きく開いた〈歪み〉の亀裂が残された。こうして〈眼〉がまだ開いている間に、モウガン・ラーは同胞の生き残りを見つけるべく、悪意に満ちた辺獄への危険な探索を敢行した。やがてモウガン・ラーは故郷たる〈方舟〉を発見し、生きのびていた者たちを〈恐怖の眼〉から脱出させると、共に渾沌の軍勢に戦いを挑んだ。しかしながら、この失われていた同族の帰還に対して、他の〈方舟〉から歓待の声はあがらなかった。謎に包まれたアルタンザールのエルダーはおおっぴらな疑惑と敵意を向けられた。なぜなら、一万年にもわたって渾沌の猛威から無傷なエルダーなどありえないと思われたからである。

 アルタンザールは、〈恐怖の眼〉に関係が深いことから、〈方舟〉ウルスェの姉妹船として知られている。〈方舟〉アルタンザールが用いる世界聖印は「断たれた鎖」と呼ばれている。クルノスとイスハがカインの牢獄から逃げ出したというエルダーの神話に依っているのみならず、ヴァールを金床に縛り付けていた鎖がちぎられた話も示している。このシンボルはアルタンザールが〈恐怖の眼〉から謎めいた脱出を果たしたことを思うとき意味深長である。世界聖印の上に置かれた「毀れた永劫の輪」は、永遠の地獄からかろうじて脱出を果たして以来、新たな紋章としてこの〈方舟〉に採用されている。