ヴァージ宙域の開拓

 辺境宙域の中で特に注目されたのがヴァージだった。ヴァージはオリオン腕の端に位置する宙域だったが、2314年から2315年に行われた探査計画によって資源に恵まれた星が多数発見されたことで、ヴァージへの移民と開拓の波は、メディアや国家の宣伝もあって爆発的に押し寄せた。
 2316年、最初の移民船がイージス星系に着陸した。イージスは順調に発展し、ヴァージの中心地となった。旧宙域(星間国家の位置する人類宇宙)から百光年あまりも離れてはいたが、移民の波はヴァージの各所に数多くの植民地を形成していった。幸いなことに、星間国家の争闘はこの遠方までは及ばず、潤沢な資金と援助が辺境開拓にあてられていた。
 しかし、ヴァージは星間国家を宗主国とする植民地にすぎず、星間国家の緊張が高まると、その対立はヴァージにも持ち込まれるようになった。中央の大きな対立は辺境の紛争となって現れていった。