第二次銀河大戦

 人類宇宙を荒廃させた第二次銀河大戦の端緒は、2346年に太陽系連合に属するタウ・セティ星で発生したミュータント暴動だった。ミュータントとは生物工学的に改変された人類のこと。彼らの処遇を巡っては人類の間で意見が対立していた。タウ・セティではミュータントが迫害されており、サルダン帝国の支援を受けた彼らが蜂起した。
 暴動は太陽系連合の艦隊によってすぐさま鎮圧されたが、その背後に仇敵であるサルダン帝国がいたことが発覚し、緊張は一気に高まった。両国は非難を応酬し、それはやがて武力衝突にまで発展した。かくして第二次銀河大戦が勃発した。
 この戦争は先の大戦よりもはるかに苛烈で残酷なものとなった。星間国家すべてが、三つの巨大な陣営に分かれる形で大戦に巻き込まれ、いくつのも世界が破壊され、莫大な人命が失われていった。まさに人類史上最悪の惨禍が出現した。交易は止まり、文化は衰退し、貴重な資源は枯渇した。
 この大戦は辺境にも影響を及ぼさずにはいなかった。戦火によって体力を減殺された旧宙域の星間国家は、辺境開発から次々と手を引いていった。ヴァージ宙域は、2375年のケンダイ会戦でドライブ空間通信衛星網が完膚無きまでに破壊され、中央との連絡を完全に絶たれてしまった。見捨てられた辺境世界は生き残りをかけた孤独な闘争に投じられた。この後、辺境の孤立が終わるまでには実に一世紀以上の歳月が経過する。
 血塗られた第二次銀河大戦は百年以上続いた。もはやそのころにはこの戦争に勝者はいないことがはっきりした。このままでは生き残っている星間国家もすべて共倒れするのは目に見えていた。
 2465年、三つの有力国家の指導者が一同に会した(オリオン連盟のワーゼン・ヘイル大統領、リグンモア星間協商の協会代表アリソン・ブリール、サルダン帝国の皇帝レジスト)。この会談ですぐさま平和は実現しなかったが、この後数年にわたる努力によって、ようやく大戦は終結を見ることになる。
 2472年、オリオン連盟のヘイル大統領の尽力が実を結び、ついに連合条約が締結された。これは終戦条約であるだけでなく、銀河連合の創立をもうたった条約だった。この条約では、12の星間国家が承認された。そしてこれらの星間国家の拠出金によって銀河連合が創立された。銀河連合の使命は、恒星間交通の安全保障、星間紛争の調停、人類とその友好種族の安寧の監督、である。銀河連合は、人類宇宙が再び戦乱によって引き裂かれぬよう監視し、未来に向けて発展することができる環境を整え、確固とした展望を提供することを約束する組織である。