WoD第8章カバーストーリー

デイヴィッドはカーラジオを消した。まったく、最近の音楽は性に合わない……。
そうこうするうちに、車は街灯も舗装もない砂利道へと入っていった。月光が照らす中、道は森へと分け入っていく。だが森なんぞにデイヴィッドは興味はなかった。
彼はまだ頭にきていた。ガソリンスタンドの女性店員は、彼の仕事を聞いて大笑いしたのだ。彼が冗談ではないことを説明しても、爆笑は止まらなかった。デイヴィッドは支払いを置いてスタンドを飛び出したのだった。
すると、車の脇に年老いたインディアンがいた。酋長のようないかめしい顔をした老人は、すぐに帰れ、おまえの聞いた話は皆でたらめだ、と言った。だがそれはデイヴィッドの確信を固めることにしかならなかった。
デイヴィッドはサスカッチを見つけ出そうとしていた。すでに出版社には、目撃談を書いた本を約束してしまっていた。いまさら後には引けないのだ。半年にもわたる取材旅行の末、つかれきった彼は、最後には自らが目撃者になるしかないと考えたのだった。
そして、すべての手がかりは、伝説であれ伝承であれ、この森近辺を指していた。
物思いにとらわれていた彼は、前方の注意を怠っていた。気づいてブレーキを踏んだ時には遅かった。路面は雨に濡れて車輪がすべった。毛むくじゃらの巨大な何かがフロントガラスに激突した。バンパーに衝撃が走った。エアバッグがふくらんで視界を完全に隠してしまう直前、彼は見た。長い鼻面と緑色の目を。そして何もかもわからなくなった…………。