Airship Pirates

 Cubicle 7 Entertainmentsから発売されているスチームパンクRPG
 DriveThruRPG.comでPDF版が購入できます。

Abney Park's Airship Pirates: A Roleplaying Game Based on the Songs of

Abney Park's Airship Pirates: A Roleplaying Game Based on the Songs of "Captain" Robert Brown

 アマゾンではハードカバー版が買えるようです。
 同社が出しているヴィクトリアン・マジカルRPG「Victoriana」と同じHeresy Engineというルールシステムを使用しています。「Attribute+Skill」個数のd6を振って、1か6の目を成功と数え、困難さを表す黒ダイスを別個に振って成功を打ち消す、という感じ。ざっと見た感じ、Victorianaとくらべると魔法ルールがないぶん、主役ともいえる飛行船の設計やチェイスルールを強化してあるようです。

世界観

 シアトルのスチームパンク・バンドAbney Parkの「Airship Pirate」という曲から着想を得ているそうで、このバンドも世界設定の中で重大な役割を担っています。

 ある日、Abney Parkが公演に向かう途中に飛行機事故に遭遇します。衝突したのは、なんと二十世紀初頭からタイムトラベルでやってきた英国の飛行船オフェーリア号でした。Abner Parkは乗員と意気投合し、タイムトラベルを使って歴史を改変し、世界をよりよいものにするため旅立ちました。
 その結果、1751年以降の世界史は別の道をたどり、西欧列強の世界支配も起こらず、世界大戦の悲劇も起こらないことになりました。平和な世界で技術は進歩し、黄金時代が訪れたかに見えました。
 しかし、本来の歴史よりもずっと早く訪れた人口過剰によって地球規模の環境汚染が進行し、世界的な大問題となりました。過密と汚染の進む都市生活を捨てて“ネオベドウィン運動”という前近代的生活に身を投じる若者もおおぜい現れました。そして二十世紀末、環境問題を解決し、世界を救うことを唱えるカリスマ的指導者ヴィクター・ハイポクレーツが米国大統領に当選しました。そして“ネオヴィクトリアン”と呼ばれる熱狂的な支持者たちの支援をてこに、彼は世界政府の首班にのぼりつめたのです。
 しかし、ヴィクターの本心はおそるべきものでした。彼は“世界を救う”つもりでしたが、人類を救う気はなかったのです。地球の癌である人類を間引きして、全世界を野生に戻すのがヴィクターの目標でした。地球を汚染したテクノロジーは進歩を禁じられ、退行を強制されました。
 さらに、秘密警察と軍隊を動員した彼の強権によって、人類はいくつかの大都市圏に集められました。そうした巨大都市の中心には“変化の牢獄”(Change Cage)と呼ばれる建物が屹立し、禁じられたテクノロジーや反体制住民が投獄され、二度と出てこられませんでした。やがてこうしたメガ・シティはチェンジ・ケイジ・シティと呼ばれるに至ります。
 住民は強制退去され、電話網は切断され、無人となった地域にはヴィクター肝いりの秘密研究所で遺伝子から復活させられたサーベルタイガーやマンモスなどの先史の野獣や“超獣”と呼ばれる新種の肉食獣が放たれました。それらは人肉食を習慣づけられた人工の“人類の天敵”でした。シティへの移住を拒否した人々はこうした野獣によって絶滅の憂き目にあったのです。
 やがてヴィクターは皇帝を名乗りました。彼にしたがわないものは、原野で暮らすすべをおぼえたネオベドウィンと技術退行にあらがった都市住民たちだけでした。後者は空に浮かぶ都市を建設すると、原野の人食い獣や皇帝の魔手がおよばない高山の頂に逃れました。
 それから一世紀以上の経過した西暦2150年が「Airship Pirates」の現在です。世界のほとんどは原生森林と砂漠に覆われ、そこに獰猛な先史の野獣がうろついています。皇帝ヴィクター三世のもと、人類のほとんどは、巨大都市に押し込められ、十九世紀のようなスタイルの抑圧された身分制社会に暮らす“ネオヴィクトリアン”です。公式には無人とされる原野には今もネオベドウィンの諸部族が住み、高山地域には“スカイフォーク”と呼ばれるようになった文明社会の末裔が残っています。
 陸上がもはや人類のものではなくなった今、長距離移動の主な手段は飛行船です。今、飛行船を駆るのは帝国空中海軍(IAN)の軍艦と、皇帝にしたがわない“海賊”の小型快速船です。PCはこの海賊となって、帝国の魔手を避けながら、自由と冒険を謳歌するのです。