グローランサの魔術(1)

 コアルルブの中では、当然ながらグローランサ独自ルールは魔術に集中しています。以前の版にくらべるとずいぶん簡略化されたなあという印象ですね。
 以降本文のざっと訳。

魔術の概要

 グローランサは魔法の世界であり、物理や自然法則ではなく、神話にのっとった超自然的パワーの交流によって支配されている。神話が文化を定め、神話が五感で触れる現実を形作るのである。人々がふるう魔術の種類は文化と宗教によって決まる。グローランサに存在する幾多の宗教は異界と交流する。この超常領域を旅する者は、終わることのない神話に自ら分け入り、実際に神々や聖人や精霊と交流することができる。

  • 全般的制約:グローランサの住人は、自分の文化的背景からもたらされる魔術に忠実なので、地元で利用できる魔術ならばどんなものでも使う。歴史上、先祖伝来の魔術伝統から成分を抽出したり純化したりしようとする試みは、必ず劇的な災厄を引き起こした。代表例が神知者である。
  • 全般的必要:あらゆる者が何らかの種類の魔術を実践している。一般人は生計を立てるために日常の役に立つ魔術を用いる。一方、英雄は伝説になるような強大なパワーをふるう。平凡な農夫であろうと強力な冒険者であろうと、魔術には文化的な要素が不可欠なので、所属する共同体を無視することは誰にもできない。共同体は国家レベルのものもあれば、盗賊団程度の規模のものもある。共同体は力を貸してくれるので、人々はそれを守るために戦う。
  • どんな種類の魔術も同等だ:いろいろなタイプの魔術があるが、ルール上ではどんな種類の魔術も同様に扱う。おのおのはすべてひとつの能力と見なされるので、たとえば〈飛行〉の神技と〈鷹のごとく飛ぶ〉精霊と〈飛翔〉の呪文は、すべて効果上は同等である。また、魔術をあらわす能力は、カバーする範囲の大小にかかわらず、その名前のみがルール上意味を持ち、それ以上の詳細な効果を決めておく必要はない。
  • キーワードが魔術を表す:魔術ルールでは傘型キーワードを用いるので、内包する能力をいちいち書き連ねる必要はない。

ルーン

 ルーンはパワーを秘めたシンボルである。ルーンこそグローランサの魔法でできた建材といえる。ルーンは象徴、元型、体現であり、同時に物質界に出現する物質とエネルギーそのものである。
 ルーンは単なる記号ではない。ルーンが描かれたときには、表象する魔法のパワーが実際にその中にこもるのである。ルーンは繰り返し書かれてもその力が減るということはなく、むしろ宇宙におけるルーンの存在がより強固になる。

神話

 幼い頃から、人は自分の文化の神話を学ぶ。それは神々の業績を語りなおしていくスリリングで謎に満ちた物語だ。神話は神代を舞台とする。神代とは、人界と異界の境目が今ほど固まってはおらず、神々が自由に新たな物事をなし、変化と成長をうながした先史時代である。約1,600年前に神代は終わり、神々の行動は「大いなる盟約」と呼ばれる出来事によって制約された。そして今、世界を変えていくのは死すべき定めの男女である。そのために、自らに内在する神々の姿を奮い起こし、異界から神々しいパワーを引き出す。神話は魔法のパワーに至るための案内図である。もし自分の神がかつてそれをなしたのであれば、おそらく自分もなしとげられるだろう。たとえそれがどれほどの不可能事であっても。
 異界の真実を悟ることは死すべき定めのものには困難である。人界を統べる法則はやぶられ、一直線に進む時間というものすらないのだから。物事は順序通りに起こるとはかぎらず、時には同時に発生する。神話が生まれた場所である異界は、こねなおす力とつながりを持つ者なら変化させることができるのである。これはもともと神々の持つ力なのだが、神に祝福された者ならば、そうしたパワーを獲得して、独自の神話を鍛え上げることができるだろう。