ファースト・コンタクト

 人類の太陽系開発を見守っている者たちがいた。フラール人というこの種族は、遠く母星から切り離されて太古から地球に住みついていた。約一万年前、フラール人は人類との接触を試みたが失敗に終わり、その経緯が各地の妖精や神々の神話となって残った。その後フラール人は、地球の辺境に隠れ住んで時機の到来を待っていた。人類の開発が進むにつれて、彼らは極地へとしりぞき、やがて月面や太陽系の天体へと移住していった。
 2124年7月17日早朝、冥王星の衛星カロンを出発したフラール人の宇宙船は、六超大国率いる艦隊に護衛されて地球に着陸。全世界が騒然とする中、コレージュ・ド・ジュネーブ超大国フラール人の大使との会談が行われた。
 フラール人との友好的な接触にもかかわらず、地球上では混乱と政情不安が発生した。その中で、隠棲を選んだ富豪たちによって、後に星間国家となるボレアリス共和国が建設された。エルサレム、ローマ、ニューデリー、メッカでは、人類が宇宙唯一の知性体ではないという事実に惹起された宗教暴動が発生。平和的共存から徹底的絶滅まで様々な意見が飛び交った。
 2124年10月27日、接触条約が締結され、フラール人に完全な市民権が与えられた。フラール人は国籍を決める権利を得、ガニメデにある拠点はフラール人の主権国家として認められた。その見返りに、フラール人は新技術を人類に提供した。この技術が人類に恒星間宇宙への道を開いた。