第一次銀河大戦

 地球帝国議会と植民星政府との緊張は高まるばかりだった。
 2296年、恒星間航行技術を有するツァー人が、フリーの探検家によって発見される。ツァー人は超光速航行技術を持たないながらも、数個の星系に住みついていた。このツァー人の帰属をめぐって、地球政府と有力植民星との間で争議が勃発した。ツァー人自身は銀河文明に参加する気はなく、こうした領有主張を拒絶した。この問題は解決の糸口が見えないまま、地球政府と植民星との間の亀裂を劇的に広げていった。
 2298年、グレゴール・ケントは地球からの独立を宣言、サルダン帝国を建国した。植民政府の中で最強の軍事力を誇るサルダンが独立宣言したことで、他の植民星も次々とこれに続こうとした。ヴォイドコープ社もついに親会社であるマイクロテル社と決別した。ボレアリス共和国だけは内紛のためにこの潮流に乗ることが出来なかった。
 翌2299年、地球の六超大国は大艦隊を率いて独立運動の鎮圧に乗り出し、第一次銀河大戦が勃発した。続く三年間で、戦火は人類宇宙全土に拡大。それまでのあらゆる争議や問題が噴火し、宇宙規模の全面戦争へと発展した。
 この悲惨な戦争は長引いた。やがて2308年に始まったサルダン帝国の大攻勢によって地球軍は壊滅的な打撃を受けた。2311年には地球の敗勢は明らかとなった。2312年、地球講和条約締結。25の星間国家がこの条約によって承認された。地球の超大国は解体され、地球と近傍の百強の惑星を領する“太陽系連合”に再編された。